内閣府青年事業の依頼でトンガ王国を訪ねた事がある。
天皇皇后両陛下ご結婚記念事業として実施されてきた日本政府主催の青年交流事業の副団長を依頼されたのである。
勿論ツポウ5世に当方がトンガへ行くこと伝えなかった。が、トンガでの公式歓迎式典にはツポウ5世がお出ましになった。手桶と魚包丁のショッピングのお手伝いをさせていただいたおかげで名前と顔を覚えていただいていたようで
「りえこではないか、なんでここにいる?」
「アーウー、アーウー」と大平首相になってしまいました。
その日、トンガ外務省からホテルの当方の部屋に電話が入った。
「皇太子が、アナタに明日来るように、とのことです。」
断る理由がないし、断れないし。どーしようー。
「今回は日本政府の事業ですし、団体行動なので、まずは許可を得てから、アーウー,アーウー。」
勢いの良い日本青年たちに
「実は皇太子に明日呼ばれましてー。」
「まあ、ステキ。是非御受けしましょう。」
「イヤ、呼ばれたのは私なんですけど。」
「早川さんだけのワケがないでしょう?全員で行きましょう。」
私も一人より皆と行った方が心強い。
失礼かもしれないと思いつつもトンガ外務省に、
「全員で行ってよろしいでしょうか?」と電話をした。
ツポウ皇太子は驚かれたかもしれないが、OKが出た。
ご招待いただいたのはThe Villa という皇太子の私邸である。
そこでツポウ5世は即興のジャズを、カワイのグランドピアノで弾いていただいたのである。
皇太子から明日ランチに皆でいらっしゃい、と再びご招待いただいた。(皇太子は本国では結構暇なのかもしれない)
断る理由がない。
翌日訪ねると、なんと皇太子自らスパゲッティを作って日本青年に振る舞っていただいたのである!
ピアノだけでなく、料理の腕もプロ並みなのだ。
このVillaのどこかに、日本で買われた木の手桶と、魚包丁があるんだろうな、と思いながらスパゲッティをいただいた。
帰国後、天皇皇后両陛下にトンガ訪問を直接ご報告する機会をいただいた。
日本青年たちが、トンガ国歌を天皇皇后両陛下にご披露しましょう、と言い出した。
暗譜でしかもトンガ語で歌えるように日本青年たちに指導したのは私である。
「えっ、止めておいた方がいいんじゃないの?」
「早川さん何言っているの。歌いましょう。」
日本青年は相変わらず勢いがよいのであった。
トンガ国歌はツポウ国王を讃える歌である。
天皇皇后両陛下が静かに聴いていただいているご様子を今でもよく覚えている。
'E 'Otua Mafimafi, Ko ho mau 'Eiki Koe,
Ko koe Koe fa lala 'anga, Mo ia 'ofa ki Tonga;
'Afio hifo 'emau lotu, 'A ia 'oku mau fai ni,
Mo Ke teli homau loto, 'O mala'i'a Tupou.
全能なる神よ
全能なる我らの神よ、我らを守りたまえ、
神はトンガを慈しみ、我らは神を信ずる
祈りのい声を聞け、我らの土地に神の加護あらん
我らの切なる願いを聞きたまえ、
我らの国王トゥポウを支え守りたまえ