海と3人の女性 左からルブチェンコ博士、ボルゲーゼ女史、カーソン女史
<ジェーン・ルブチェンコ博士はどこへ行ったのか?>
先月の米国出張に向けて用意した2つの質問。
1.米軍の太平洋シフトは太平洋の広義の海洋安全保障に何を意味するのか?
2.4月にクリントン国務長官が熱弁したUNCLOS批准推進。立役者のルブチェンコ長官の姿はどこに消えたのか?
「ルブチェンコは干されてる。」
NOAAの責任あるポジションで且つルブチェンコを知る人からの情報だった。
それはトンガ海溝の底まで突き落とされたような感覚だった。
笹川平和財団が創立以来、初めて海洋問題を取り上げたのが2008年。
広大な海原の太平洋。しかし笹川太平洋島嶼国基金は過去20年海洋問題を取り上げてこなかった。
即ち私が海洋問題を勉強しだしたのが2008年。
<米国の海洋政策>
翌年2009年、米国はオバマ政権を迎え、ホワイトハウス主導で海洋政策が策定された。この推進役がNOAAのジェーン・ルブチェンコ博士。オバマ大統領が指名した、初の学者で女性のNOAA長官となった。
米国の政策作りは透明公開。ホワイトハウスのウェッブにはパブコメの募集があり、自分も提出した。他のコメントといっしょにホワイトハウスのウェッブに掲載されている。多分日本人でパブコメを提出したのは私だけだと思う。結果、米国の海洋政策はハワイ始め広大な太平洋に大きく注目することになった。ルブチェンコ博士に当方のコメントが届いたに違いないと妄想していた。勝手に身近に感じていた訳だ。
米国の海洋政策は海洋生態系研究者であるルブチェンコ博士の意向が出ており、海洋生態系を守る事が基本で、経済開発的要素は二の次のように見える。(本当は違うと思うけど)いざ、政策を実行するに当たって、漁業関係者とその利権を守る議員(特に共和党)から反発が出て来たらしい。オバマ、ルブチェンコが押す新人事も議会が潰したそうである。ホワイトハウス主導の海洋政策策定自体、官僚主導との批判が出ている。
ルブチェンコだけではない。オバマ大統領が指名した環境保護派の内務省長官も厳しい立場にあるという。
環境保護派も経済開発に繋がらなければ支持を得られない、ということだ。だからクリントン長官はUNCLOSを批准すれば海底資源を開発できビジネスになる、金になる、と強調していた訳である。
それが現実なのかもしれない。
<海と3人の女性>
海洋問題を勉強し始めて5年になる。その漢字には「母」という字があるにも拘らず、「海」と言えば男の世界のように思っていた。
最初に手にしたのがレイチェル・カーソンの「潮風の下で」「われらをめぐる海」「海辺」の海の3部作。科学専門書と思って開いた頁は詩集のようだった。これで海洋問題に取り憑かれてしまった。
しばらくしてやっぱり海洋問題は広すぎて手に負えないと思い、寺島さんに「実は私は音大卒でとても海洋問題を理解できる程のバックグラウンドはありません。」と泣き言。ところが「音楽の道から”海洋の母”になった人がいますよ。」と寺島さんからエリザベス・マン・ボルゲーゼさんの事を伺った。これで引き下がる口実を失った。
そしてルブチェンコ博士である。米国の海洋政策はその海域に接する日本や太平洋島嶼国との協力が必要、という当方のコメントを聞いてくれた方である(多分)。きっと長官という立場とは関係なく海洋問題を継続されるのだろうから、これからも注目したい。