やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

アメリカのために世界を敵に回したパラオ共和国

アメリカのために世界を敵に回したパラオ共和国

昨年、12月。大型台風Bophaが近づくパラオの情報をウェッブで収集した時、パラオはこの台風ではなく、パレスチナ問題で世界から注目を浴びている事を知った。

国連決議でパレスチナが「オブザーバー組織」から「オブザーバー国家」に格上げされたのだが、反対した国家が9カ国あった。そこにパラオが入っていたのである。

<反対票を投じた国>

米国、イスラエル、カナダ、チェコパナマ

マーシャル諸島ミクロネシアナウルパラオ

パラオが、そしてまた太平洋の島国がイスラエルパレスチナ問題に関心があるとは聞いた事はない。明らかにアメリカの意向に従った投票である。ナウル以外のマーシャル諸島ミクロネシア連邦パラオ共和国は米国と自由連合協定も締結している。

パラオを裏切ったアメリ

ところが、忠誠を誓ったパラオを、アメリカ議会は早々に裏切ったのである。2月の事だ。2009年に15年間の第一次自由連合協定が終了した米とパラオ。2010年からさらなる15年の協定が約束されていたが、それが伸びに延びて、先月の米国議会で否決されてしまったのである。

詳細はウォールストリートジャーナルが報じている。

Sequestration in Paradise

- Palau worries it will be collateral damage in Washington's budget fight.

パラオアメリカへの忠誠はこれだけではない。2009年にはアメリカのイラク戦争の尻拭いまでさせらている。世界中どこも受け入れを拒否したグアンタナモウイグル人パラオが受け入れたのだ。

イラク戦争、米中問題、中国の国内問題等々、過大な背景のあるウイグル人受け入れは、小さな島国には負担が大きすぎた。

パラオが受け入れたウイグル人のリーダーが、日本経由で失踪していたのである。周知の事実だったようだが、レメンゲサウ大統領が年明けにメディアに公表した。パスポートも書類もない人間がどのように出国したのか?パラオの国家としての法執行能力が問われる事となった。(日本も?)

日本との自由連合を提案

今回のパラオ出張では、まさに上記に関わる渦中の人と3日間いっしょにいた。名前は出さないが、大統領も、日本大使館も彼に会いたいがために、当方とのアポを入れたようであった。

米国との自由連合はどちらにしろ10年後には切れる。米国にその意思はない。

他方、米国もミクロネシア3国も本来の、即ち戦後ニュージーランドが国連に提案し、採択された「自由連合」について誰も理解していない、という事がここ数年のヒアリングでわかった。

本来の自由連合は、非植民地化のプロセスなのである。冷戦下、米国はこの制度を逆用し、植民地化を強化したのだ。

3日間、渦中の人と自由連合について多くを議論させていただいた。

渦中の人は、米国との自由連合協定交渉担当となるのであろう。当方をダシに行われたパラオ国内の駆け引きで、渦中の人は意を決したようであった。

「僕とリエコにはアイデアがある。日本とパラオ自由連合を締結する可能性だ。」

某元閣僚との談話で、渦中の人が突然話しだしたのは驚いたが、ドキドキした。

ミクロネシア諸国と日本の自由連合。羽生会長から、頭がおかしいと思われるから誰にも言うな、と言われている当方の提案である。

米国のパラオへの支出は15年で229ミリオンドル。年間15億円程度だ。

現在、沖縄の米軍に対し日本は年間2千億円拠出している。米軍がグアム等移動すれば負担へ減る(ハズ?)。

そして「戦略なき日本のODA」は、現在年間約100億円を太平洋の島々にバラまいている。

15億円の負担は日本に取ってそれほど重くないはずである。

パラオだけでなく、同じく米国と自由連合協定を締結するマーシャル諸島ミクロネシア連邦とも自由連合協定を締結すればよい。さらに、米国であって米国ではない、グアム、マリアナ諸島もその可能性はある。

年間100億円程度で広大な海洋で繋がるミクロネシアと日本の新たな関係が生まれる。これが日米同盟の新たな方向だと考えている。