やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

安倍首相の太平洋訪問に向けて (3) ゲダイ メイト!

2008年に私が立ち上げたミクロネシア海上保安事業。

我々のイニシアチブを歓迎する米国とは対照的に強いリザベーションを示したのがオーストラリア。 在ミクロネシアの豪州大使からは

「日本がミクロネシアの海洋安全保障ですって! 日本語をミクロネシアの海上法執行官に教えたどうかしら?日本の違法操業を取り締まるために必要よ。」

あの時、第一次世界大戦で豪州NZを守ったのは日本海軍である事を知っていたら、応酬できたのに今思い出しても悔しい。

キャンベラの外交官からは

「なんでミクロネシアで海上保安事業を始めたわけ?(当方から過去の経緯を説明) あなたのせいね。豪州政府が今まで築いてきた秩序を壊されたくないのよ。余計な事はして欲しくないわ。」

日本の一民間財団にパラノイア的反応を示す豪州政府の太平洋政策はそんなレベルか、と逆に哀れに感じた。

先週、久々にキャンベラを訪問。 安倍首相のパラオPIF出席や太平洋訪問の可能性に豪州政府がどのような反応を示すか、1月のホノルル出張よりも大きな不安を抱えてキャンベラに入った。結果を先に言うと「日本はアジアのベストフレンド」とのアボット首相の言葉は単なる外交辞令ではないと思えるような、今までにないような歓迎、友好ムードであった。

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(私もこんな雰囲気でキャンベラで迎えられました。手は握られていませんが。。)

シドニーのシンクタンクでその理由を伺った。 背景にはジョン•ハワード元首相の影響があるのでは、とのこと。アボット首相はハワード政権下で閣僚を務めた。よってハワード時代の人材が周りに配置されている。特に外交分野の人材は親日派であったハワード政権の影響があるのではないか、との事であった。

そういえば、ミクロネシアの海上保安事業が開始した2008年は極端な親中を掲げたラッド政権時代であった。 ジョン•ハワード氏。昨年11月に旭日大綬章を受賞している。日本政府もこのような背景を十分認識しハワード・アボット政権との信頼関係を確実にしているのでは?

2014年4月のアボット首相来日に続き7月に安倍首相の豪州訪問が予定されている。そして7月末に2人でパラオ(PIF総会)入り、という筋書きか。

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(在豪州秋元大使から旭日大綬章を授与されるハワード元首相)

今回お会いした豪州外務省、国防省、政策研究所の方達は、気持ちが悪いくらい友好的であった。 思わずホンネが出てしまった。

「イヤー、本当の事を言いますと、2008年からキャンベラに通っていますが、当初強い反発があり、こんな歓迎されたのは初めてです。」

「本当ですか?我々は、前のグループと違いますから。」

2014年は日豪海軍協力の100周年記念にあたり、日豪の新たな海洋協力をスタートする格好の年である。本件は、さすがに国防省は把握していたが、多くのオーストラリア人(日本人も)忘れている歴史である。

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