やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

水産行政とは?その2

海洋問題の大きな部分を水産、漁業が占める。

水産行政を知らずして海洋問題は語れないのだ。逆に海洋問題がわからないと水産行政は語れない。

この3、4年、「水産行政」を戦後の水産庁の設立の様子から見て来た。そして現在国際海洋法大家の同志社大学坂元茂樹教授の下で勉強する機会をいただいている。

私が海洋問題を扱うようになったのは2008年に立ち上げたミクロネシア海上保安事業である。

2008年3月11日、太平洋軍キーティング司令官の公聴会の証言に反応した笹川会長の正論での提言(2008年5月6日)を受け、笹川平和財団前会長の羽生さんがミクロネシア海上保安事業を提案。私は羽生さんの指示でミクロネシア3カ国の大統領の合意を得る業務を行ったが、半年という短い期間で達成した。

笹川平和財団自体がそれまで海洋問題を扱った事は無かった。私自身も事業立ち上げで役目は終りかと思っていた。ところが、豪州政府が(当時は親中ラッド政権)大きくリザベーションを示し私のキャンベラ通いが開始した。よって、海洋問題は現場でゼロから、自己流で学んで来た。

財団には海洋を知る人はいなかったので、元国交省審議官の財団前会長羽生さんは国交省や海保、そしてそのリタイヤ組を財団に呼んできたのである。当然海洋専門家と思いきや、島嶼問題や水産問題は知らないのである。知っていればパラオの海洋保護法を支持しないであろうし、ミクロネシア連邦司法長官が日本のカツオ漁船に対して行ったカツアゲのような取締を支援しないであろう。

この件で羽生さんに思いって具申した事が何回かあり、会長室で吊るし上げにされるという貴重な経験もする事となった。それだけでなく、水産庁と関係のある(パラオへの取締船派遣の事)当方は事業から外れてくれとまで言われた。

このままでは笹川平和財団だけでなく、水産問題を知らないパラオや他の太平洋島嶼まで悪い影響が出ると思い、2016年1月に羽生さんに当方の業務内容を確認したところ、これからもずっと仕事を継続して欲しいとの事。それで海洋問題を体系的に勉強しようと思い、同志社大学の坂元茂樹教授の門を叩いたのだ。

産經新聞記者のコメント「水産行政がこれでいいはずはない、そう思いませんか?」

水産行政を批判するには海洋問題を知らないとできないはずだ。そしてこの海洋問題はどこまでも広く、深い。