やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

安倍首相の太平洋訪問に向けて(11)なんでパース?

日豪経済・安全保障の連携強化と太平洋地域の課題!ブルース・ミラー駐日豪大使が語った

特にパースの事は出てきませんが。 *

 

www.youtube.com

外プレ会見もある。ブルース・ミラー 駐日オーストラリア大使 2014.7.3

 

安倍総理の太平洋訪問。なんでパース?と海外からの問い合わせが多いのでここにまとめておきたい。

 

これは当方の憶測の範囲。

今年11月に予定されているパース近郊で開催される「アルバニー船団記念式典」への海上自衛隊艦艇派遣に向けたCommander-in-Chiefによる「露払い」である。

 

 

13. アボット首相は,第一次世界大戦中、豪州・NZ 軍(ANZAC 軍)を輸送する最初の船団が日本海軍巡洋戦艦「伊吹」による護衛の下、アルバニー港を出航して100周年であることを記念する、2014年後半に実施予定の「アルバニー船団記念式典」への海上自衛隊艦艇派遣に係る日本の意欲を歓迎した。

日豪首脳会談に関する共同プレス発表(4月7日)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000034802.pdf

 

13. Prime Minister Abbott welcomed Japan’s willingness to send a Maritime Self-Defense Force vessel to participate in the Albany Convoy Commemorative Event in late 2014, which will mark the centenary of the departure of the first convoy of ships, escorted by the HIJMS Ibuki that carried ANZAC forces to World War I.

Joint Press Release on Japan-Australia Summit Meeting (7 April, 2014)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000034801.pdf

 

6. 閣僚は,2014年後半の「アルバニー船団記念式典」への日本の海上自衛隊艦艇の参加に 向けた段取りを再確認した。この式典は,第一次世界大戦に赴く豪・NZ合同軍団(ANZAC) 部隊を載せ,日本海軍軍艦「伊吹」によって護衛された最初の船団の出発100周年を記念 するものである。

第5回日豪外務・防衛閣僚協議 共同プレス発表(仮訳)、平成26年6月11日

http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000041605.pdf

 

6. Ministers reconfirmed arrangements for Japan’s participation, through a Maritime Self-Defense Force vessel, in the Albany Convoy Commemorative Event in late 2014. The event will mark the centenary of the departure of the first convoy of ships, escorted by the HIJMS Ibuki that carried ANZAC forces to World War I.

5TH JAPAN-AUSTRALIA 2+2 FOREIGN AND DEFENCE MINISTERIAL CONSULTATIONS

Wednesday, 11 June 2014, JOINT PRESS RELEASE

http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000041606.pdf

 

 

2つの大戦を経てやっと手した私の太平洋!と豪州は思い込んでいるのである。冷戦終結後、米軍が去って一人になって10年、やっぱり一人では守れない事がわかり米軍が戻って来る事を期待していた。しかし、その米国も声はすれども姿は見えず。

そこに日本の影が。

このブログでも豪州海軍の日本に対するパラノイアぶりは小出しに書いている。書けない事ばかりなのでこの100倍位の反応と想像していただいてよい。何せ、日本がミクロネシア海洋安全保障やろうかなとミクロネシアに密使(私です!)を送っただけで(上記の写真です)、中止を宣言していたPPBPを復活させたのである。

豪州は日本だけには来て欲しくないのだ。だって日清戦争以来の仮想敵国は日本だし、実際に日本と戦った記憶は明確に繰り返し繰り返し、国民に刷り込んできた。第一次世界大戦で日本海軍に助けられた記憶はすっかり忘れて。。

 

これも先に書いたが、この豪州が消そうとしていて、実際に消えている第一次世界大戦の記憶を呼び覚ましたのが当方が実施した今年2月の豪州出張である。

なぜ豪州に行ったのか? 

新年、安倍首相の太平洋訪問を控え、豪州との関係が懸念され、早速羽生会長からキャンベラ(ホノルルも)に行ってこいとの指示であった。

誰に会って何をやればいいかは、相変わらず任されている。で、その時用意していたカードの一枚が「日豪海洋協力100周年」。これが、日本との海洋安全保障分野の協力事業を血眼になって探していた当方のカウンターパートであるキャンベラ政府とジョンストン国防大臣のアドバイザーに”知らざる驚愕の史実”として受け入れられたのである。

 

 

本件、助けた日本は知っていた、のだ思う。

オーストラリア秋元義孝特命全権大使のメッセージにも書いてある。しかし、こういう件は助けられた方(即ち豪州)から言ってこないと動けないと思いませんか。だから当方の情報操作、工作活動、なんというんでしょうか、押しつける感じではなくて、必要な情報を提供しただけ。

「あとはアナタしだいよ。」とさらっと突き放した。実際は

「日本の太平洋における海洋安全保障協力は豪州が何をして欲しいかにかかっている。なぜならば豪州こそが一人、当該地域のステータスクオを築き、海洋安全保障を今まで維持してきたからだ。」

と心をこめて申し上げました。

今回のキャンベラ出張、情報提供の相手と時期がドンピシャだったようだ。

改めて貴重な機会をいただいた笹川会長と羽生会長にお礼申し上げます。

 

 

これは想像だが、本件、日本の海上自衛隊も豪州の王立海軍も乗り気ではなかったのでは?

なぜならば、豪州海軍にとっては黄色人種(当時は白豪主義)に助けられた屈辱的歴史であり、日本海軍にとっては助けに来てやったのに「矢矧」に発砲され、太平洋シアターでは豪州海軍から情報提供を渋られ協調行動を避けられる始末。

日本の海上自衛隊にしてみれば、100年前の事とは言え、もう二度と助けてやるか、という気持ちではないだろうか?

私もこの件を始め知った時怒りで震えが止まらなかった。

 

しかし、ここは大人の、大国の対応を示そう。

相手は車が作れないだけでなく、船も造れない、動かせない(次回書きます)、GPSも読めないのか領海侵犯を繰り返すシーパワー(パワーと言うのもおこがましいかも)なのである。

150年前、アイルランドのジャガイモ飢饉でイギリス人によるジェノサイドに会い、地球の裏側まで逃げて来た哀れな民族なのだ、とこれは某太平洋島嶼国の外務大臣と一致した見解です。

 

* ミラー大使のテレビインタビューのポイント

豪州大使の中国への懸念。中国軍の透明度と国際ルール。

日米安保と違うのは米豪同盟はいっしょに戦争してきたとい点。

集団的自衛権によって共同演習が可能。

日豪の歴史問題ー1956年岸総理の豪州訪問。未来志向に修正。

豪州の暗い歴史ーアボリジニの虐殺。どこの国にもある。

南シナ海問題も豪州の国益に関係している。

日豪の防衛協力ー何も決まっていない事を強調したい。協力の可能性として1.人道支援、2.共同訓練、3.人物交流、4.災害救助、5.海上保安、6.平和維持活動、7.国防力構築