情報を発信するところに情報は集まる。
これ、情報管理の黄金律。
このブログで情報を発信する機会を笹川陽平会長からいただいてからハヤ4.5年。多くの方達から励ましのメールや、さらなる情報をいただく事となった。
今回はなんと、羽生会長から情報をいただいた。
「豪州が2ビリオン豪ドルをPPBPにつけたぞ。」
安倍総理の太平洋訪問で頭がいっぱいだったので、青天の霹靂。
前回のキャンベラ出張ではPPBPは続けるけどお金がないんだよねー、が豪州側の一致した見解。
もしかして日本に協力要請か?とも想像していた。
2ビリオン豪ドル ー 約2千億円。シャドーキャビネットが1.5ビリオンでできると言っていたので椀飯振る舞いだ。
The cost will include the vessels, maintenance, training, infrastructure and logistic support arrangements. The follow‐on program is projected to cost $1.5 billion over the life of the project. (McCann, 2013)
一体全体、どこでどのような判断がされたのか。オランダ病末期のの豪州造船業界への"Sop" - 御機嫌取り、甘言 - という辛口コメントもある。
The local sourcing of the patrol boats looks to be a sop to Australian industry; Asian shipyards could undoubtedly build the vessels much more cheaply. (Mark Thomson 2014)
大型の海軍の戦艦2隻を海外に発注する事にしたからである。 海外発注の対象となったのが25,016トンの HMAS Sirius と 18,221トン HMAS Successのreplacement
”Government has given First Pass approval for Defence to conduct a limited competitive tender process between Navantia of Spain and Daewoo Shipbuilding and Marine Engineering (DSME) of South Korea for the construction of two replacement replenishment vessels based on existing designs.” (DoD, 2014)
労働者が幅を利かす豪州。この海外発注に対し国内の造船業界は黙っていない。
この反発に対するジョンストン国防相の見解以下の通り。
”本当は政府もmade in Australiaにしたいでんす。”
”でも、残念ながらオーストラリアの造船業界は大きな船を造れないです。”
”しかも、今の船が古いので早く代替船を海軍は必要としているんです。本当はもっと早く交換してなくちゃいけなかったんです。”
(Sydney Morning Herald, 2014)
このジョンストン国防相の豪州造船業界への批判を裏付けるような事故が発生。
この5月に処女航海をしたHMAS Canberraが機械の故障を起こしたとの記事。しかも1.5ビリオン豪州ドルをかけた27,000トンの戦艦である。加えて不幸な事故が重なった。乗船技師が事故発生時に電源操作を間違えて、機械がメルトダウンしてしまった、とある。だから、造船業界だけじゃなくて海軍の人材にも問題が。。
(News.com.au, 2014)
今回の2ビリオン豪ドルの措置は、早い話、この造船業界の反発への対処である。
しかし、PPBPの船は小さくてシンプル。この発注が豪州の造船業界に寄与するものは何もない、ただの食いつなぎだ、との厳しい意見もある。
当方、素人ながらこの意見には疑問を感じる。ミクロネシア3国に日本財団が供与している小型監視艇、船の事はよく知らないが、豪州海軍がその真意を疑うほどの高性能、高品質なのだそうだ。「なんでこんな小さい船にこんな高品質素材を使用するんだ!」と聞かれた事がある。
小さくてシンプルものにこそ、最高の技術と素材を用いる、そしてこれが日本造船業への発展にもつながる、という話ではないだろうか?
要はクラフトマンシップ、もの作りへの姿勢の違いではなかろうか?
今回の2ビリオン豪ドル。悪く言えば、太平洋島嶼国で年間50−60日しか使用されていないPPBPだから、船が壊れようが、動かごうが、島の人は文句を言わない、言えない。よって、手抜き作業というのか、高くて粗悪な、レベルの低い豪州造船業界に任せておこう、という判断ではなかろうか?
この2ビリオン豪ドルには35年間のメンテや、現地派遣される豪州海軍、島の人々へのトレーニング費用も含まれる。
太平洋の違法操業、その他諸々の海洋安全保障を唯一守るPPBP、日本が側面支援すべき隙間が山ほどあるような気がする。
Reference:
Australia Launches $2 Billion Pacific Patrol Boat Program, 19 Juni 2014
http://defense-studies.blogspot.co.nz/2014/06/australia-launches-2-billion-pacific.html?m=1
Linda McCann, The Future of Australia’s Pacific Patrol Boat Program: the Pacific Maritime Security Program, Centre for defence and Strategic Studies australian defence College, August 2013
Mark Thomson, Shipbuilding—Australian style, The Strategist, Australian Strategic Policy Institute, June 2014
http://www.aspistrategist.org.au/shipbuilding-australian-style/
Department of Defence, Minister for Defence – Boosting Australia’s maritime capabilities, 6 June 2014
Australian ship builders thrown a lifeline and a warning from Defence Minister David Johnston, The Sydney Morning Herald, Lisa Cox, June 6, 2014
A brand new 27,000 tonne Australian Navy ship was damaged during maiden sea trials, JUNE 05, 2014, News.com.au,