やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

PPBPからPMSP へ

豪州が1980年代からその権威と威信にかけて実施してきたPPBP - Pacific Patrol Boat Program

1980年代といえばUNCLOSが採択された年(1982年)で、島嶼国はそのEEZの管理をどうするか、という事が課題としてあった。PPBPはその対応措置である。

今度この事業が名前を変えて継続する。PMSP - Pacific Maritime Security Program

この議論2009年から始まっているが豪州政府は一歩も進んでいない。

私はこの経緯を豪州政府役人より知っており、レクチャーするまでになった。

最初は、国防省が国境警備局に投げようと必死だったのだが、国境警備局は太平洋のタの字も知らず何も進まなかった。そんな現状を当方の知り合いも痛感し、閣僚にアドバイスし、結局は国防省にその主導権が戻る事になった。

今月予算だけは2ビリオンドルついた。中身は?8月から本格的に詰めていくようだ。

これに関連する2つのレポートを見つけたので備忘録として。

一つは国防省が委託したもので昨年の8月発行。一つはSam Bateman氏によるもので昨年末に発行されている。

Bateman氏のペーパーはキャンベラ政府の官僚主義を批判しつつ、チモールからPNG, ソロモン諸島、フィジー、バヌアツの「不安定の弧」を議論した内容。特にパプアニューギニアに力を入れろ、との主張。

McCann氏の方は、各島嶼国ではなくFFAに船を提供したらどうか、という画期的な提案が含まれている。

どちらも、日本の役割に大きく期待している様子はない。というか、何を期待していいのかわからないのだろう。私の予想はIUU監視だ。世界でまともにIUU監視をしているのは日本だけなのだから。多分豪州はIUU監視とは何かわかっていない。

Linda McCann, The Future of Australia’s Pacific Patrol Boat Program: the Pacific Maritime Security Program, Centre for defence and Strategic Studies australian defence College, August 2013

http://www.defence.gov.au/adc/docs/Publications2013/Linda%20McCann%20-%20Shedden%20Paper%20%28final%29.pdf

Sam Bateman and Quentin Hanich, Maritime Security Issues in an Arc of Instability and Opportunity, Security Challenges, Vol. 9, No. 4 (2013), pp. 87-105.

http://www.securitychallenges.org.au/ArticlePDFs/SC9-4BatemanandHanich.pdf