やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

仏領ポリネシア、ニューカレドニアPIF正式メンバーに!

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左から ニューカレドニアの紋章、旗(非公式)仏とニューカレドニアの旗、仏領ポリネシアの旗、紋章

 

1971年、未だ冷戦まっただ中で太平洋の海が、島が、西洋列強にとって安全保障上重要だった頃、自分たちの事は自分たちで決めたいとまさにself-determinationの意図を、フィジーのカミセセ・マラ閣下が表明し、創設されたのが太平洋諸島フォーラム。

創設には”ビッグブラザーズ”のニュージーランド、オーストラリアは外せなかった。 よって英国色の強い地域組織が誕生し、”ビッグブラザーズ”はドラえもんのジャイアンのような存在となっている。

先週ポナペで開催された第47回PIF総会で、ナント、仏領のポリネシアとニューカレドニアがPIFの正式メンバーになる事が合意されたのである。これは、両地域の長年の夢であった。 New Caledonia, French Polynesia now members of the Pacific Islands Forum September 12, 2016、Bernadette Carreon

http://www.pacificnote.com/single-post/2016/09/12/New-Caledonia-French-Polynesia-now-members-of-the-Pacific-Islands-Forum

その背景として考えられる事が、このブログでも散々書いて来たように、アングロフォン(豪州NZ)とフランコフォンの長年、といってもクック船長の時代から続く敵対関係に雪解けの傾向があるからであろう。 この雪解け現象の一つの要因は、2005年7月「虹の戦士号」爆破事件20周年記念行事がニュージーランドで大々的に開催され、これを一つのきっかけに、太平洋のフランコフォンとアングロフォンの壁が崩れていったことだ。9.11以降、太平洋地域の安全保障強化のため、豪、NZ、仏の軍事協力を進める必要性もあった。

もう一つのきっかけは、やはり中国の太平洋進出であろう。先般のシャングリラダイアログでもフランスのルドリアン国防相が明確に述べたが、太平洋・インド洋の安全保障はフランスの利益でもある事を強調している。日本が受託できなかった豪州への潜水艦も、フランスの太平洋海洋安全保障へのコミットメント、と受け止めて良いであろう。 このニュース、早速知人のフランス人海洋研究者に伝えたところ、フランス大使館と早々に協議を開始するという返事が来た。当方が2018年の島サミットにはニューカレドニア、タヒチが同じテーブルに着く事になりますね、と余計コメントをしたからである。 心配なのは日本の外務省の大洋州課である。多分何も知らない。仏領太平洋諸島の事。

ポイントは日本外務省の皆さんが目の色を変える仏製ワインが飲める事です! フランス政府の潤沢な支援で、基本的には福祉教育は大丈夫ですが、独立の動きは常に燻っています。フランス政府が対応しきれないとすれば海洋安全保障(広義の)でしょう。 タヒチ、ニューカレドニアに軍隊を置いていますが千人規模だったと思います。 フランスは、豪州、NZ、米国に比べ、ピューに代表される環境保護プロパガンダ組織とは一線をおいているようなので、(つまり魚はFish nd Chipsでしか食べないKiwi, Oz, Pomと違う)日本にとって味方になる可能性もあります。

他方、余り機能していなかったFRANZ - 仏豪NZの安全保障の枠組みが、バヌアツの災害支援等で徐々に動き出しています。日本の出る幕がなくなるのか、それとも積極的に日本が参加する道を作るのか、これも重要な課題だと思います。お金だけ出す、ということにはならない事を祈っています。

それから、ニューカレドニアに本部を置くSPC及びその関連組織では仏が勢力を持っています。日本はSPREP等とも協力関係があるので、そこをどう延ばすか、とういうのも鍵ではないでしょうか? 私が大洋州課課長であれば、フランス大使館と早速協議の窓口を作ります。既に情報は大使館に行っていますので彼らも喜ぶでしょう。