やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

国際協力による太平洋島嶼地域の情報通信支援政策 - PEACESATのケーススタディを通して- 第ニ章

国際協力による太平洋島嶼地域の情報通信支援政策

-PEACESATのケーススタディを通して-

早川理恵子 1999/1/10

第2章 太平洋島嶼国の情報通信

1. 通信の現状

太平洋島嶼国の通信の特徴は、旧宗主国の通 信事業者による独占経営という点にある。1970年代半ば、独立を果たした太平洋島嶼国は、独立による孤立を招かないためにも、即ち旧宗主国とのパイプを保っておくためにも、国際通信の開発を必要としていた。また、 多数の離島や隔絶された地域の開発や国としての統一を保つために国内の通信開発も重要な課題であった。(注1)

しかしながら、小国ゆえに通信事業立ち上げための財政規模が十分でない島嶼国は旧宗主国の通信事業者と独占契約を結ばざるを得なかった。(注2)

たとえばソロモン諸島のSolomon Telekomは1989年に52%の政府保有株と48%とのCable & Wireless(C&W)保有株で再編された合併会社の形をとる電気通信事業者である。これが意味するところは電気通信網を公共インフラと考え、収益が低い遠隔地や人口の少ないところに十分なサービスを提供することを課題とする政府と、会社の収益に負担をかけるこのようなインフラ整備に対して積極的になる動機を持たない民営会社の共同運営ということである。

但し実情は、旧宗主国の英国企業であるC&Wにソロモン諸島政府は大きく依存している状態であり、圧力をかけることは困難である。さらに島嶼国政府が政府保有の会社に赤字が出ても補填する予算的余裕がないどころか、通信事業の収入をあてにしている部分があることを認識しておく必要がある。もう一つの特徴は競争のないモノポリー状態であることがこの地域の通信状態がなかなか改善されないこと、また通話料金が世界的に比較して非常に高いことがあげられる。

1994年に発行された南太平洋フォーラムに向けて書かれたレポー ト(注3)ではこの地域の電気通信開発は旧宗主国の事業者と深くつながっているのが特徴で、外資通信事業者は自社の製品及びシステムの市場として、また各国の援助をその主な資金源として期待している、と指摘している。

なぜならば、離島が多く、人口が少なく、資源も少なく、外貨の獲得が困難なこれらの島嶼国で通信事業が経済的合理性を持って自立的経営をすることは通常では不可能であるからだ。以下に1995年に南太平洋大学が収集した情報と、筆者が1997年に同地域に出張した際に入手した太平洋島嶼地域の通信事業者に関する情報をまとめる。世界的な情報通信市場の自由化は太平洋島嶼国にとっても無縁ではなく、その環境は日々変わっていると予想されるため、以下は必ずしも現状を示すものでないことを断っておく。

フィジー

Fiji Posts and Telecommunications Ltd.(FPTL)が国内回線を、Fiji International Telecommunications (FINTEL)が国際回線のサービスを提供している。FINTELはSuvaに近いVatuwaqaに衛星地球局と海底ケー ブルの受信基地を設置。FINTELはSuvaでInternational gateway exchangeも行っている。 政府はFPTLの唯一の株主であったが、1993年に民営化 した。FINTELは政府とCable & Wireless Public Limitedのジョイントヴェンチャーだが、利益は政府が管 理する。(C&Wが49%、政府が51%の株を保有)国内の無線通信の管理運営はMinistry of Information, Broadcasting, Television and Telecommunicationが行う。

クック 諸島

Telecom Cook Islands (TCI)が国内回線及び国際回線のサービスを提供している。クック諸島政府とNew Zealand Telecomの共同所有である。首都のラロトンガにINTELSAT標準B局が設置されている。同局はニューランドにIDR Linkと太平洋地域 のPACNETサービスに連結している。TCIは1992年に民 営化された。それ以前はCook Islands Post Officeが国内回線を、Cable & Wireless Public Limitedが国際回線の サービスを提供していた。 TCIは国内の7つの離島に地球局を設置している。これらの地球局は国内、国際、地域内をPacific Area Co- operative Telecommunications Network(PACNET)経由でつなげている。TCIが国内の無線通信の管理運営を行う。

キリバス

キリバスには2つの電気通信組織がある。 Telecom Services Kiribati Ltd. (TSKL)は国際回線、国内回線サービスを行う。他方政府が100%所有するTelecom Kiribati Ltd.は国内の電気通信に関するポリシー、運営全ての権限と責任を持つ。 TSKLはINTELSAT標準B局とInternational gateway exchangeを首都タラワに設置している。同社はキリバス政府が61%、オーストラリアのTELSTRA(前OTC International)が39%の株を所有する共同経営の形を取っている。TSKLは1995年現在、無線通 信に関するライセンス、管理等の責任を負っているが徐々にTKLに移行する予定である。

マーシャル諸島

Marshall Islands Telecommunicationsはマーシャル諸島政府とアメリカの COMSATの共同経営で、国際、国内回線両方のサービスを提供している。無線通信に関する管理はMinistry of Information, Broadcasting, Television and Telecommunicationsが担当している。なお、Majuro Ebeye, Telephone Directory, (Marshall Islands National Telecommunications Authority 1997)によれば、Marshall Islands Telecommunicationsは名称をMarshall Islands National Telecommunications Authorityに変更した。Majuro 環礁、Ebeye島、 Kwajalein環礁に以下のサービスを提供している。首都Majuroには筆者が訪ねた1995年には光ファイバーケーブルが敷かれていた。Cellular Telephone Service/Internet Service/Key System for Business/Directory Assistance/Dedicated Data Circuits/International Direct Dialing Worldwide/Telex Service/PBX System for Larger Business and Hotels/Radio Communication to the Outer Islands

ナウル

ナウル政府がNauru Telecomの唯一の所有者である。 Nauru TelecomはINTELSAT標準B局とInternational gateway exchangeをナウルに設置している。オーストラリアのTELSTRAと契約し地球局の管理を委託している。 無線通信のライセンス及び管理もNauru Telecomの責任範囲である。ニウエTelecom Niueは1992年に民営化された。ニウエ政府が唯一の株主である。Telecom Niueは INTELSAT非標準地球局をニウエに設置し、Telecom Niue無線通信のライセンス及び管理を行っている。

ソロモン諸島

Solomon Islands Telekom Ltd.はソロモン諸島政府とCable & Wireless Public Limitedの経営権と所有権を共有し、国際、国内回線のサービスを提供している。政府が主要株主である。(C&Wが41.9%、政府が58.1%の株を保有) Solomon Islands Telekomは国内回線用衛星、DOMSATを運営する。首都のあるガダルカナル島以外の島々を結ぶサービスを提供し、Ministry of Communicationが通信のライセンス、管理を担当している。

トケラウ

1996年にニュー ジーランド政府の支援を受け、電話回線が初めて設置された。世界で数少ない電話通信サービスがない国の一つであった。(他にはTristan Da Dunha, Pitcairn) Tokelau Telecommunicationsは100%トケラウ政府が所有し、管 理運営することを目指している。以前は約480km離れたサモアの首都アピアに短波ラジオで通 信するしか手段は なかった。これはオープンな音声通信のため会話内容はみんなに聞こえてしまう。また、1994年からPEACESAT を利用し各島に散在する政治家を結び国会の開催をしていた。

トンガ

Cable & WirelessがINTELSAT標準Bの地球 局を首都Nuku'alofaに設置・所有し、国際通信サービス を提供し、Tonga Telecommunications Commission (TTC)が国内回線のサービスを提供している。なお、 電話通信は主な離島を結んでおり、Haapai, Vava'u島にはTroposcatter Radioシステムを利用している。TTCが通信のライセンス、管理を担当する。

ツバル

1995年に Tuvalu Telecomは民営化を果たした。100%政府所有で、国内・国際回線のサービスを提供している。離島には HF無線通 信を使用している。Tuvalu Telecomが通信のライセンス、管理を担当する。

バヌアツ

バヌアツには2つの電気通信事業者が存在する。 VANITELとTelecom Vanuatu Ltd.(TVL)である。 VANITELは地球局を首都Port Vilaに置き、国際通信サービスのみ提供する。バヌアツ政府、Cable & Wireless PL とFrench Cable and Radio Companyが経営権と所有権を共有する。(3者各33.3%の株を保有)Telecom Vanuatu Ltd.(TVL)は1992年に政府とVANITELの共同出資で経営を開始。国内回線サービスを提供。離島に対してはterrestrial linkを使用。以前はTVLが通信のライセンス、管理をしていたが、Ministry of Communicationsに移管。

サモア

サモア政府が所有するSamoa Post Officeが国内、国際回線サービスを提供し、Post Officeが通信のライセンス、管理を担当している。

仏領ポリネシア、ニューカレドニア

1984年9月6日以来、フランス領ポリネシアは内政自治権制定法を手にした。フランスはポリネシアにおける警察、法の施行、防衛、通貨、基金、教育制度においてある程度の権力を保持するとある。またフランスは法の一部、外交問題や通信機関を支配する権利を持っている。基本的にラジオやテレビは政府の支配下におかれているが、民間のラジオ放送局の運営は認められいる。この地域の通信環境は他の独立国より数段よい。100人以上住む島には全て衛星地球局が設置されている。但し、その衛星で受信するのは本国で制作されたテレビ番組が圧倒的でローカル番組は極限られたものでしかない。正確な数字を入手することはできなかった。

2. 地域機関の役割

太平洋島嶼国には多数の地域機関が存在する。現在政府間地域機関 は下記の8つがある。この地域に地域機関が多いのは、一国の規模が小さく、資源の有効活用のためにも地域で協力して開発に取り組んだ方がよいこと、そして国際社会に対し、一国の島嶼国の声は小 さいが、十数カ国の大きな固まりとなれば、それなりの力を持つ地 域と成りうることが要因と考えられる。8つの政府間地域機関の中で情報通 信分野に関与しているSouth Pacific Forum (SPF) , Secretariat of Pacific Community (SPC)及びThe University of the South Pacific (USP) の遠隔教育事業に関して次に述べる。なお、South Pacific Organizations Coordinating Committee (SPOCC)という各組織の調整機関を設置し、フォーラム事務局長が 議長に任命されている。

South Pacific Forum (SPF) 本部フィジー

Forum Fisheries Agency (FFA) 本部ソロモン諸島

Pacific Islands Development Programme (PIDP) 本部ハワイ

South Pacific Regional Environment Programme (SPREP) 本部サモア
*

South Pacific Applied Geoscience Commission (SOPAC) 本部フィジー


Secretariat of Pacific Community (SPC) (注4) 本部ニューカレドニア


Tourism Council of the South Pacific (TCSP) 本部フィジー


The University of the South Pacific (USP)本部フィジー

SPFの電気通信事業

1972年フォーラムの形成とともに、地域の電気通信開発はフォーラム事務局の重要な役割の一つとして組み入れられた。主に衛星、地域ネットワークに関する調査研 究と関係諸機関との協議、隔離された地域の開発、そして人材トレーニングが主たる活動内容であった。1983年には特別10ヶ年計画South Pacific Telecommunications Development Programme(SPTDP)が策定された。フォーラムの活動と平行して 1970年代からITU/UNDPの調査及び技術・人材育成プログラムも提供されている。1992-1993年のフォーラム年次報告書にはSPFの電気通信局が取り組む基本的な短期目標として次の3つを上げている。

技術、インフラ開発の支援

地域の人材育成


組織、部門運営の改正

組織、部門運営の改正部門では、電話料金や規制に関した協議を行っている。(注5) しかし1996年フォーラムの組織再編に伴いフォーラムから電気通信部門はなくなり、他の地域機関に移管されることもなかった。よってこの地域の電気通信に関する政策協議は Pacific Islands Telecommunications Association(PITA)というボランティア地域組織が行う可能性を持った。

しかしPITAの決定は政治的拘束力はなく、メンバーには各国政府関係者と通信事業者がいるが、実質的には後者が力を持つ可能性が高い。そんな中1998年ミクロネシア連邦で開催された第29回南太平洋フォーラム首脳会議では情報通信インフラの経済への影響や地域開発への重要性を認識する形でフォーラム通信政策閣僚会議の開催を決議した。(注6)

この背景には、通信市場の世界的自由化に伴い今後同地域がどのような政策を進めていくか、また通信に関わる料金設定など世界のルールが先進国主導で決められていくことに対する懸念も一方であるようだ。この閣僚会議がどこまで世界の情報通信の動きを認識し、影響力のある発言をするか興味深く、引き続きこの研究の延長として追っていきたい。

SPCの電気通信関連事業-地域メディアセンター

1947年に設立されたSPCは、当初より政治的ことがらは扱わないことを前提に人材育成・福祉分野で太平洋島嶼地域の発展を支援してきた。SPC本部はニューカレドニアにあるが、SPCの重要な事業の一つである「地域メディアセンター」はフィジーのスバにある支部内に置かれている。この地域メディアセンターは、メディアが域内の教育、持続的開発、健全な統治(good governance)に有効に利用されること を目的としている。(注7)

SPFが電気通信に関する法制度や人材育成を含むインフラ開発支援に重点を置いていたことに対し、SPCの地域メディアセンターでは ラジオ、テレビ、ビデオ、グラフィックデザイン、パブリケーションに関する短期技術訓練コースの提供等、情報通 信のコンテンツ制 作に関わる人材育成を中心に行っている。

また、この地域のメディアが最初、政府によって運営されていたため、民営化した際の自立的経営方法の指導も同センターの重要な役割であるという。メディアの中でも島嶼地域はラジオの需要が高いと言われている。これは広い海洋に島が散在するという地理的な要因もあるが、この地域がもともと文字を持たない文化であったことにも関係していると思われる。

3. 南太平洋大学組織の概要


南太平洋大学(The University of the South Pacific: USP)はその12のメンバー国に遠隔教育のサービスを提供している。 12の国とは、クック諸島、フィジー、キリバス、マーシャル諸 島、ナウル、ニウエ、ソロモン諸島、トケラウ、トンガ、ツバル、 バヌアツ、サモア(旧西サモア)で、太平洋の西経155 度から東経 150度、北緯17度から南緯25度の広い範囲に位置している。USPは 完全な地域機関であるが、今日の国際社会の中でもこのような形態の教育機関はめずらしく他にはカリブ海にあるUniversity of the West Indiesがあるのみである。 USPはそのプログラムやスタッフが地域をカバーしているという外見的なものに留まらず、運営形態、財政、政治、アカデミック、物理的構図すべてにおいて、所有者である12の国が地域ガバーナンスを試みているという点においてもユニークである。このことは他の国際的教育機関のどこもチャレンジしたことのない、多国間から 成る法的に構築された組織であるという観点においてUSPの存在が再評価されるべきであろう。

2年間の試験的運営を経て、USPは1970年3月に、11の太平洋島嶼国[クック諸島、フィジー、キリバス、ツバル(旧ギルバート、 エリス諸島)ナウル、ニウエ、ソロモン諸島(旧イギリス保護 領)、トケラウ、トンガ、バヌアツ(旧ニューヘブリデス)、サモア(旧西サモア)]の要請を受け英国憲章(Royal Charter)によって正式に設立された。1991年にはマーシャル諸島が新たに加わり現在12のメンバーを抱える。

主な運営費は12の国から拠出されている。フィジーの首都スバに本校を置くほかに、フィジーとサモアに2つのキャンパスがあり、バヌアツとトンガに2つの校舎、そして各国に10のエクステンショ ンセンターを配置している。土地や建築物、資材は各メンバー国政 府からUSPに提供されている。生徒は広く太平洋地域をカバーし、 ポリネシア人、メラネシア人、ミクロネシア人そしてインド人(英領時代砂糖黍プランテーションの労働者としてフィジーに来たインド人の子孫)の生徒が大多数を占める。彼らのほとんどが各国政府が支給するUSPへの奨学金を得て入学する。

当初旧宗主国の専門家が多数を占めた大学スタッフも1985年には地元市民が60%を占めるようになった。USPは当初より、このような多様性を抱える組織として2元的(dual-mode)に対応できる教師を抱え、遠隔教育の開発を進めていた。USPの遠隔教育(注8)遠隔 教育を実施するにあたり、一番重要なのは情報通信手段である。 USPがカバーする広大な地域の教師と生徒をつなぐためには、各国の通信環境の障害を乗り越える努力が必要となってくる。一般的にこの地域の運輸及び情報通信のインフラ整備は開発が遅れているからだ。他の地域ではいつでも信頼して利用することが当然の通信や運輸サービスが太平洋島嶼国ではしばしば故障で利用できなくなっ たり、突然の変更も発生しやすく安定したサービスとは言えない。 故に広大な島々に散在する生徒達をネットワークを結ぶことは限りない時間と費用を費やすこととなる。

現在USPでは、本部と各国のキャンパス、校舎、センターを結ぶ手段としてINTELSATを利用したUSPNet, ファックス、電話そして郵 便が使用されている。USPNetは、1972年にNASAの中古衛星 ATS-1を利用して構築した教育支援ネットワークである。衛星技術 を教育目的に利用した例としては、USPは世界のパイオニア的存在といえよう。USPは、NASA, カーネギー財団、USAIDの支援を受けてPEACESAT事業に参加する形でこのネットワークを構築した。

中古衛星ATS-1が燃料切れで使用不可能となるに至る前にUSPは関 係諸機関と交渉を重ねていたが、結局国際衛星通 信組織INTELSAT が途上国にそのサービスを一定期間無料提供するProject Shareを利用することとした。国内通信に関しては香港に本社を置くCable & Wireless Public Ltd.の協力を得ながらUSPNetを継続させることができた。現在USPNetは12のメンバー国の内、10カ国のみを結んでいる。そのうちトンガ、バヌアツ、ソロモン諸島、フィジー、クック諸島の5つのセンターに衛星経由で直接つながっている。キリバ スは1989年までつながっていたが国内の通信事業者が高額の利 用料を要求してきたため、支払が不可能で現在は繋がっていない。 ナウル、ニウエ、ツバル、サモア、トケラウの5つのセンターはHF ラジオを使用している。

USPNetが支援を受けている国際通信事業者で支援を受けているの は、Cable and Wireless Public Ltd., Fiji International Telecommunications Ltd. (FINTEL) , Telecom New Zealandの3社である。また、国内の通 信部分のサポート受けている国内通信事業者はTelecom Cook Islands, Fiji Post and Telegraph, Solomon Islands Telekom, Tonga Telecommunication Commission, Telecom Vanuatuの5社である。これらの通信会社はUSPと契約を交わしており、そのネットワーク利用を認めている。契約に変更が ある場合はすべての通 信会社と再度協議しなければならない。 USPNetは1991年頃から通信の質や安定性の改善を目的に、 「USPNetアップグレード」計画を自ら策定し、日本政府へ資金援助申請を行った。1997年に日本・NZ・豪3カ国政府の協調案件として 支援が決定した。この件に関しては4章の日本の項目で詳しく扱う。

注 釈

注1 太平洋島嶼国の電気通信開発の歴史はDavey, J. Graham, Telecommunications Development in the South Pacific Region: Transport and Communications for Pacific Microstates: Issues in Organization and Managementを参照。

注2 同前書20頁参照。

注3  Cutler, Terry: Telecommunications The Pacific Link – A report for the Pacific Forum on the development of the telecommunications sector in the region を参照。

注4 Pacific Community, 前South Pacific Commission. 同組織は北太平洋に位置する、パラオ、ミクロネシア連邦マーシャル諸島、グ アム、サイパン、キリバスの6メンバーから、名称から「南」を取る提案を受け、協議した結果 1997年2月7日に正式にPacific Communityに変更した。但し略称はSPC (Secretariat for Pacific Community)で以前と変わらない。

注5 筆者はフォーラムの電気通信局のDirector, Edmond Duran氏と何度か話す機会を持った。(結局Duran氏はフォーラム電気通 信局最後のDirectorになった)Duran氏はこの地域の電話料金が法外に高いこと、また各国の通信事業者が値段を下げる努力や、教育などの公共施設に対する協力、離島など地方の通信の改善を怠って いることなど問題点を指摘していた。通信部門で政府が強いイニシャティブをもてないことは前に説明したが、フォーラムの会議に集まる各国通信事業者の代表は皆旧宗主国の専門家で、政府代表の存在感は薄く、これでは変革は困難であろうという印象を筆者は 強く持った。

注6 TWENTY-NINTH SOUTH PACIFIC FORUM Pohnpei, Federated States of Micronesia, 24 - 25 August 1998, FORUM COMMUNIQUEより。"Forum Economic Ministers Meeting,(中略)Recognizing the importance of efficient and effective communications services for both national and regional development, the Forum agreed to convene a Forum Communications Policy Ministerial meeting. The aim of the meeting will be to promote competitive telecommunications markets and, taking into account social and rural/urban equity concerns, discourage unwarranted cross-subsidisation between service sectors; work towards the development of a cooperative approach to information infrastructure and regulatory services; and examine developments in relation to international settlement rates for telecommunications services. The Forum considered international settlement rates for telecommunications services and the very serious implications for some Forum Island Countries of the decision by the United States to adjust those rates with respect to its own telecommunications services. Leaders strongly urged the United States to recognise the adverse consequences for all Forum Island Countries of that decision and to respond favourably to their concerns in that regard.

注7 SPCに関しては次の資料を参照。South Pacific Commission, South Pacific Commission - History, aims and activities 13th Edition, 1996. South Pacific Commission, South Pacific Commission - Annual Report 1993, 1994. South Pacific Commission: South Pacific Commission - Annual Report 1995, 1996. South Pacific Forum, South Pacific Forum Secretariat Annual Report 1992-1993, 1994. Secretariat of Pacific Community, Web http://www.spc.org.nc

注8  USP及びUSPNetに関しては主に次の資料を参照。

Renwick, William: Clair St. Kinf, and Douglas Shale. “Distance Education at the University of the South Pacific”, The Commonwealth of Learning, Canada, August 1991.

Matthewson, Clair. “Distance Education in Asia and the Pacific: South Pacific” (The University of The south Pacific), UNESCO, NIME, 1993.