やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

中国の脅威とは何か?<タンホールディングスとルエンタイの例>(追記あり)

f:id:yashinominews:20180821174511j:plain
タン少年

 

好評発売中の月刊正論12月号の記事を、正論編集部と協議している時に強く感じたが、うまく伝えられなかった事がある。

「中国の脅威」だ。

 

中国の脅威は知れば知る程、形が見えなくなる、そんな印象を受けている。

それは米国、英国の金亡者と、また島の政治・ビジネスリーダー達と、そして華僑のネットワークの中に、織り込まれる様に存在する。そんなイメージだ。

 

太平洋島嶼国に見る「中国の脅威」の例としてサイパンにある、Tan Holdings。そしてその関連会社で香港にあるLuen Thai Enterprises Limitedの事を書いておきたい。

 

1930年9月24日、福建省、泉州市、鯉城区で生まれた Tan Siu Linは1948年、フィリピンで貿易を行う父親のところに行く。マニラの織物市場が火事で崩壊し、父親が1961年に死亡。その後マレーシアのサバに家族で移りゴムの会社を設立。1965年には香港に移りLUEN THAI SHIPPING AND TRADING COMPANY を設立し、日本、中国、台湾、グアム、サイパン等で業務を展開。

 

そしてまさにTan王国とでも言えるようなビジネスを、メディアから保険も含め、ミクロネシアを中心に展開しているのである。下記に会社をリストしてみよう。

 

L & T (Guam) Corporation,

Unity Development Corporation/Century Plaza,

L & T Group ofCompanies Ltd.

Realty Management Services,

Concorde Garment Manufacturing Corporation,

Century Insurance Co., Ltd.

Cosmos Distributing Co., Ltd.,

CTSI Logistics and Century Finance Co., Ltd.,

POI Aviation,

Century Travel Agency, Inc.,

Saipan Tribune, Inc.,

Micronesia Fishing Venture, Ltd.,

Luen Thai Fishing Venture, Ltd.,

Alliance Paper Products,

Asia Pacific Airlines,

Century Hotel,

Mariana Express Lines, Ltd.,

Micronesia Mall Stadium Theatres and W & T International Corporation,

Fiesta Resort & Spa Saipan,

Fiesta Resort Guam and Century Tours,

Saipan Grand Hotel,

TakeCare Health Systems, LLP,

Tango,Inc./

Agana Center Stadium Theatres,

D&Q Company,

 

さらに社会貢献活動として財団を設立し、グアム大学への奨学金など資金援助をし、グアム政府から表彰もされている。

 

(参考)

I MINA'BENTE NWEBI NA LIHESLATUM GZ-LbIAN

2008 (SECOND) Regular Session

Executive Committee, Resolution No. 236

http://www.guamlegislature.com/EC_Res_29th/EC%20Res%20No%20236.pdf

 

f:id:yashinominews:20180821174540j:plain

タン王国を支えるタンファミリー

 

問題は、このタン王国がビジネスの背景で米国政治家と組んだマネロンや、売春、違法操業等々も展開している事である。以前ブログに書いた。

 

<参考>

サイパンの闇の奥 - やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

サイパンの闇の奥ーその2 - やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

 

 

一番の問題は、現地メディアを抑えていることだ。誰もタン王国を批判できない。

だからタン王国の黒い情報は現地でしか得られない。

当方はこの被害者なので、よく知っている。目の前でやられたのだ。

ミクロネシアは南太平洋に比べメディアが弱い。メディアこそ、民族自決の、民主主義の、また公正な社会の要である。そこでミクロネシアメディア協会設立に奔走したところ、直前でこのタン王国から資金援助を受けているジャーナリスト、フロイド・タケウチ氏に裏切られ、潰されたのである。

現在でも、多くのミクロネシア地域のジャーナリストがこのタン王国の影響下ある。そりゃそうだよね。これだけのビジネスを抑えているんだから金欠メディアは靡かざるを得ない。

 

最近気づいたのが、Luen Thaiは違法操業をしながら(クック諸島大臣の汚職事件等)、環境保護活動のミクロネシアチャレンジやThe Nature Conservancyなどに資金援助している事だ。NGOも金欠だ。

 

最悪なのが、タン王国の華僑ネットワークの影響力である。ミクロネシアの政治リーダー達が次々と中国との関係を強化している背景にはタン王国のミクロネシア地域でのネットワークと華僑のネットワークが繋がっているからであろう。

ミクロネシア連邦のモリ前大統領や、ヤップの伝統的酋長がその例だと想像している。

 

これが、当方が現地で経験している「中国の脅威」なのだ。

 

<参考>

SPOTLIGHT: The Tan Family and the Strength of Unity

By Tharawat Magazine - 2015-11-10

http://www.tharawat-magazine.com/family-institutions/tan-family/#gs.shU3Mlw

 

TAN HOLDINGS MILESTONE

http://www.tanholdings.com/timeline/