やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

「戦後70年の日米関係と沖縄、そして北東アジア」渡邉昭夫(3)

沖縄の米軍基地を扱った渡辺先生の小論は沖縄と本土の心の対立から「日中の狭間の沖縄」に話しが展開する。

 

「領土問題と言えば、歴史に根拠があるとかないとかが問われがちだが、そもそも国境とか領土主義といった観念は近代の所産である。」

 

そうだ!この基本的、当たり前の認識があまり広く共有されていないように思う。

 

パプアニューギニアの南北に走る真っ直ぐな国境線こそ、その国境の起源を考える良い例であろう。

ポルトガル、スペインの世界分捕り合戦に終止符を打とうとローマ教皇を担ぎだして地球上に真っ直ぐ線を引いた。これがトルデシリャス条約。1494年のこと。その時は地球が平らだと思われていた。ところがその後地球が丸い事がわかり、線は一本では足りない事が判明!そこで新たに引かれたのがサラゴサ条約で、これがパプアニューギニアの国境になっている。日本もこの線でポルトガルとスペインに分断されていたのだ。(←この私の理解は間違っています)

 

神の名の下において行われた。予定説。

これに異論を示したのが、即ち予定説を否定したのがグロティウスの海洋の自由論、だと当方は理解しているが、違うかもしれません。

 

渡辺先生は一通り国境、領土が近代的概念である事を議論した上で尖閣の問題に移る。ここでエルドリッヂ博士の提言を引用し、米国が断固とした姿勢を示す可能性を希望しつつも確信は持てないと悲観的だ。

 

最後の章は「アメリカはいつまでも留まるのか?」である。

安全保障の議論がされているのだが、当方の9年間の太平洋での海洋安全保障の経験から言えば、日本が出て行けば米軍は留まるのである。

米国は、気付いたら自分一人で大きな負担を負っている事に気付いた。豪州はPPBPなど努力しているがそれほど当てにならない。重要な同盟国である事に変わりない、としても。

米軍は日本に出て来て欲しいのである。勿論米軍の監視の下にである。

確かその事を、ペリリュー戦の米軍トップだったニミッツ司令官が『ニミッツの太平洋海戦史』に書いていたと記憶するが後で確認したい。

 

「沖縄を含めたオールジャパンで真剣に考えるべき時ではなかろうか。」と渡辺先生は結ぶ。

私は今再び「樋口レポート」に戻る時ではないだろうか?と提案したい。