やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

満州事変に対する欧米の認識の違い

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若き日のニミッツと東郷

『ニミッツの太平洋海戦史』(恒文社、昭和41年)に気になる記述があって、それを新渡戸と重ねてこの2日くらい考えている。

同書の一章は「日本の膨張期」というタイトルである。 その短い前文に書かれている事が新渡戸の亡くなる数年前の言動と重なるのである。

まずニミッツは日本の第二次世界大戦の道は1931年の満州事変に始まる、と認識している。 武力によってもたらされた(満州国の)承認を米国が拒否し条約を守ることを米国は日本に喚起したこと。 しかし欧州諸国が米国の立場を支持しなかったので日本が侵略を継続したこと。 日本のドイツとの防衛協定はソ連の脅威に対するものであったこと。(ここでニミッツは満州事変への理解を示しているように見える)

なぜ、欧州が、すなわちリットン卿が理解をしめした満州事変に米国は断固と拒否をしたのか? これは新渡戸が指摘するように、宋美齢をはじめとする中国の米国におけるプロパガンダの成功、イエロージャーナリズム、レベルの低い米国人ミッショナリーの中国での暗躍(ミッショナリーではないがラティモアが目に浮かぶ)が背景にあるのか?

これも新渡戸の記述にあったことだが、国際連盟で日本の満州事変に理解を示した欧州と違って批難を明確に示したのが南米などの小国であったという。もしかしたら聯盟のメンバーでなかった米国の影響が、これら小国に及んでいたのかもしれない。

序文で、戦後は日米が連携し共産主義の脅威を防衛している、と書いたニミッツはアジア、中国における当時のソ連の脅威を書いている事も興味深い。コミンテルンや松本重治のお友達だったIPRの反日煽動家ラティモアは、中国を日本に渡す位であればソ連に任せたい、と思っていたのだ。 この米国のアジア、世界認識のいい加減さ! プロパガンダに対する無防備な態度、弱者や小国に対する誤解、即ち帝国主義の単純な否定論者!

ここ数日、レーニンの政治的レトリックの餌食となった米国(そして日本も!)が垣間見えてきた。 『ニミッツの太平洋海戦史』、面白いのだが受験を間近に控え、どうも集中できない。

後一点だけ。 ニミッツは真珠湾攻撃以前のハワイでの防衛の弱さを指摘し、日本軍が旧式の戦艦を壊してくれたおかげで、新たな空母が建設できた事。それによって米海軍が強化された事を書いていて、これも興味深かった。やはり、真珠湾攻撃が世界最強の米軍を作ったのではないだろうか。