やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『日本の立ち位置がわかる国際情勢のレッスン』谷口智彦著

以前このブログに書いたチャゴス諸島の海洋保護区の事が知りたくて、谷口 智彦氏が書かれた「北京が欲しがる「真珠の首飾り」と「龍のトンボ」A String of Pearls; Dragon’s Dragonfly」が収録されている、『日本の立ち位置がわかる国際情勢のレッスン』を購入した。図書館になかったのである。

 

 

中国がシーレンに置いた要衝は、かつて英国やフランスの植民地で、追い出したのは日本である。英国がアジアへの拠点としたのがチャゴス諸島なのである。そこを横須賀の在日米軍司令下がカバーしている、という話なのだと思う。

チャゴス諸島の軍事プレゼンスを守るために、即ち旧島民の帰還を阻止するためにメガ海洋保護区は必要だったわけだ。軍事的地政学と海洋保護区の関係。もしかして米国がハワイや太平洋に展開しているメガ海洋保護区にも同じような理由が隠されているかもしれない。メガ海洋保護区は軍事的アクセス、調査、そして伝統的利用は許可していたはずだ。ここは要調査。

 

ところで、この本読みやすく、また面白かったので他の章も一気に読んでしまった。

例えば「インドと中国・対外拡張のシンボル」ではインド人が植民地時代の支配者の言葉にアイデンティティを仮託するインドの精神状況は興趣に尽きない、と書かれている。これは「植民」が必ずしも一方通行ではない、即ち植民される側が植民者を積極的に取り込んだり、または文化的に植民したりする例を新渡戸が議論していたことを思い出させた。

 

それからオバマ大統領の件だ。「学生オバマが見た夢・大軍縮会議」

ここでチャーチルの言葉を引用し、40歳でソーシャリストならブレインレス-馬鹿だ、とオバマ大統領をまさかそうとは思いたくないけど..と。まさか大統領に馬鹿と書けない著者は、補遺でかなりはっきり書いている。オバマとその周辺の高官は反戦・反核で自国に誇りを持てない。日本のインテリと同じである、と。オバマ大統領、そんなに酷かったのか。現在トランプ大統領が米国一番と叫び、軍事費の拡大を進めているを見ると、まさにオバマ政権への不満が生んだ大統領だったのではないか。