チャゴス諸島メガ海洋保護区を巡る、脱植民地化・人権・英米の思惑、そしてウィキリークス

f:id:yashinominews:20190301085446j:plain

米軍基地のあるディエゴガルシア島

坂元教授の書かれた論文に、パラオの海洋保護区の問題に並んで訴訟が提起されたインド洋にあるチャゴス諸島の海洋保護区が紹介されている。

ここ数日ウェッブ検索しただけなのだが、メガ海洋保護区の実態を知る重要な情報がつまっているように見える。

この複雑怪奇な事件をわからないなりにまとめると。。

インド洋のチャゴス諸島の漁業権は脱植民地化の中でモーリシャスの人々にも与えられていた。さらに英米の軍事利用が終了したら（2016年にチャゴス諸島の一つで米軍基地があるディエゴガルシア島の貸与契約が終了）モーリシャスに返す約束であった。しかし同諸島を返還したくなく英米がモーリシャスに相談なく2010年メガ海洋保護区を設定し、漁業権を剥奪。これをモーリシャス政府がオランダ、ハーグの常設仲裁裁判所に訴え、2015年３月19日同裁判所は英国の海洋保護区制定が不法との裁定を下した。

この事件、ウィキリークスが海洋保護区制定時の英国政府役人の通信を暴露し、ニュースになった。

冷戦下、英米の軍事目的で強制退去させられたチャゴス諸島の人々を帰還させない方法として、人権問題よりも環境保護の方が英国政府の支持を得やすいと英高官が述べている事をウィキリークスが暴露している。そしてその根拠として資金があり、英国で信用を得ているピューチャルタブルトラストが啓蒙活動を支援するであろう、とも。

この複雑な事件を理解するために日本語の資料を探したが、下記の赤旗の記事しか見つからなかった。英文はもちろん沢山出ている。

谷口智彦氏が2009年に、即ち米英高官が海洋保護区案を協議している時に、インド洋の島々の軍事的重要性を書いている。『北京が欲しがる「真珠の首飾り」と「龍のトンボ」A String of Pearls; Dragon’s Dragonfly』（2009.1.8, JBPress, http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/420）

他には岩切大地氏が「島と主権―イギリス海外領土の統治における地理的要因？― 」（p.191-210、法政論叢、第 5 1 巻　第 1 号、日本法政学会、2014、http://www.jalps.jp/houseironsou/51_1.pdf）で軽く触れている。

英文は山程出て来るのだが素人目で、豪州クイーンズランド大学のAnthony E Cassimatis教授のパワーポイント"The Chagos UNCLOS Arbitration: Maritime, Fishing and Human Rights Issues and General International Law" がこの複雑な事件を簡潔にまとめているように見えた。

目を通した資料は下記に凡てリストアップした。

このチャゴス諸島のきっかけに、メガ海洋保護区に関する批判的なニュース、学術ペーパーが芋ずる式に出て来たので、２、３まとめたい。

＜資料＞

#akahata チャゴス諸島英の海洋保護区不法／国際裁判所モーリシャス主張認定・・今日の赤旗

http://blog.goo.ne.jp/uo4/e/772ecd657e697740790f1c961134f320

北京が欲しがる「真珠の首飾り」と「龍のトンボ」

A String of Pearls; Dragon’s Dragonfly

2009.1.8　　谷口智彦

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/420

島と主権

―イギリス海外領土の統治における地理的要因？― 岩切大地 p.191-210

http://www.jalps.jp/houseironsou/51_1.pdf