太平洋島嶼国のリーダーが全EEZを海洋保護区にしたり、将来温暖化で島が沈むのに備えどこかに土地を購入する話が、なんの批判的検証もせずにニュースに流れる情報をそのまま鵜呑みにされている事に危機感すら持っている。
パラオのレメンゲサウ大統領も、キリバスのトン大統領も存じ上げている。
私が両国の大統領であれば同じ事したであろう。
それほど小島嶼国現状は逼迫しているのだ。それにも拘らず、世界は彼等を見放して来たのだ。
自分たちの都合の良いときは利用して!
キリバスのトン大統領がフィジーに島を購入したニュースは当初から胡散臭い話として噂は流れていた。
最近ニュージーランド、オークランドの地理学の学生が現地調査をして実情を報告し、結構ニュースになって出回っている。簡単にまとめると。
1. 2014年トン大統領が購入したフィジーの土地はキリバス人が住む法的根拠がない。
2. この島には既に500人のソロモン諸島の人々が住んでいる。彼等は過去に奴隷狩りで移住してきた人々で伝統的土地権利がなく、キリバスの土地購入は彼の人権を脅かす要因となる。
3. 購入した土地はそれほど農業など開拓に適していない。
4. 土地は4倍近い値段で購入され、その金額(約9億円)はキリバスのGDPの5%にもなる。キリバスは世界一糖尿病と結核が多く、福祉に回されるべき予算では?
5. キリバスは2008年の金融危機で何百億円も失ったとの噂がある。土地購入は単なる投資ではないか?
等々。
キリバスの国土が海面に沈む事さえ賛否両論なのに、もう世界の認識は沈む事が確定し、その対策として土地を購入した話になっているのだ。
小島嶼国の政治的手腕、トン大統領、レメンゲサウ大統領の生き残り戦術。天晴れと言うしかない。
しかし、彼らが環境保護という美名の下に行っている事が世界の金融マフィアを喜ばし、アヤシイお金の動きに加担していないとも限らない。それに余計な環境保護が弱者を脅かしたり、効果のない水産資源管理につながっているのであれば、それは先進国が、日本が、小島嶼国の在り方を真剣に検討すべきではないか?
<関連記事>
Skepticism over Kiribati purchase of Fiji land
13 January 2016
JANUARY 17, 2016
Kiribati’s purchase of Fiji land under scrutiny
https://www.newswire.com.fj/world/pacific/kiribatis-purchase-of-fiji-land-under-scrutiny/
Kiribati’s land purchase in Fiji: does it make sense?
By James Ellsmoor and Zachary Rosen on January 11, 2016
http://devpolicy.org/kitibatis-land-purchase-in-fiji-does-it-make-sense-20160111/
キリバス人の修論だが面白い。国内の議論と海外の議論がまったく違うのはパラオの海洋保護区と同じだ。
Media and the politics of climate change in Kiribati: A case study on journalism in a “disappearing nation”, Taberannang Korauaba February 28, 2012
Pacific Media Centre, School of Communications, AUT University
http://aut.researchgateway.ac.nz/bitstream/handle/10292/4503/KorauabaT.pdf?sequence=3&isAllowed=y
このペーパーは短くてすぐ読める。上記のKorauaba氏の2014年の記事だ。
キリバス国内でこれだけトン大統領の批判がある、と言う事はキリバスが正常な証拠である。
盲目的信じている先進国のリーダー、NGO、研究者はダメね。
Micronesia in Review: Issues and Events, 1 July 2013 to 30 June 2014
taberannang korauaba, kelly g marsh, clement yow mulalap, christina sablan, tyrone j taitano