やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『国際海峡』坂元茂樹編著2015年東信堂(自分用メモ真山論文)

坂元先生が編集された『国際海峡』の中に真山全教授の台湾海峡に関する論文も掲載されている。

自分の研究に直接関係ないし、60ページもあり量が多いので読まないつもりが、わからないなりに興味深かったので自分用のメモとして書いておきたい。

 

「第6章 台湾海峡の国際法上の地位と外国艦船航空機の通行」157−217ページ

 

蔡総統が太平洋島嶼国で強調したのが「海洋国家」台湾。

漁業では、台湾という立場でWCPFCなど国際組織に活発に参加しており、海洋法の面から台湾はどのような扱いなのか気にはなっていた。

 

真山教授は「(前略)通常の国際法上の認識からは国家性を前提としなければ考えられないものがあれば、その集積が台湾の黙示的国家承認につながる可能性は排除できない。」(162ページ)とし、「台湾が中国やその他の諸国との関係において、条約及び慣習法の適用でどのような立場にあるか」をまとめる議論を展開している。(162ページ)

 

160−161ページには台湾の国家性を3つに分類することが試みられている。

1。一つの中国論を海洋法上も反映し台湾の行為に法的効果を否定する「法的効果積極的否定説」

2。1とは反対に台湾の行為を国家行為として扱う「国家性の再取得説または変遷説」

3。国家性に触れない「実務的処理説」

 

3つ目の議論で「国家性はそれがあるかないかの2つに一つ」と真山教授が議論しているところは、提携国家や、グアム・マリアナ諸島・米領サモア、そしてニューカレドニア等のフランス領など「領土」と表される国家なのかどうなのか、という存在(economyという表現も時々使われる)がある太平洋の実態を考えると気になった箇所である。

また、以前メモした五十嵐先生の提携国家の論文で気づいたことだが、海洋法条約が制定される中で、この提携国家が法的地位を確立することになったことは、海洋法と太平洋島嶼国の関係を議論する上で重要なのではないか、と考えている。

海洋法条約305条1, cと d項である。下記のブログにメモしてある。