田中則夫先生の「国際海洋法の現代的形成」を再読する前に以前読んでみたいと思った松井芳朗著「国際環境法の基本原則」を開いた。環境と国際法の関係が気になったからだ。海洋法との関連以外に、戦後の国際法の中で現れてきた自決権と天然資源の権利に関係しているような気がしたからだ。
今回読んだのは下記の章。
第一部総論
第1章 国際環境法の概念と歴史
第2章 国際環境法の特徴
第二部 国際環境法の基本原則
第3章 「国際環境法の基本原則」とは何か
第6章 持続可能な発展
第7章 共通に有しているが差異のある責任
非常の面白かった。開いてよかった。
「環境」も「持続的」も「開発」も決まった定義はない。松井先生は書かないが、山本草二先生だっtたら「イデオロギー」との関連をもっと明確に指摘されたのではないか?
環境問題を扱う時のあの偽善的雰囲気の背景がわかるような気がしてきた。特に6、7章だ。
松井先生は過去の論文を読むと自決権や天然資源の永久的主権に疑問を挟むことさえ否定されるお立場のようなのだ。当方の誤解かもしれないが。
以下、本書の下線を引いた箇所のメモ。後で読み返す時のために。
第1章 国際環境法の概念と歴史
5頁: 「環境」の定義はない
7頁: 国際法の中で環境保護は人間のため。環境のため、というのはマイナー。
11頁:国際環境法の歴史 1972年のストックホルム会議以降が重要
23頁:リオ会議は参加革命と呼ばれNGOがオブザーバー資格を与えられた。グローバルフォーラムの同時並行開催も。
24〜25頁:「多様な非国家行為体の役割を大きく向上させるこのような動向は、冷戦の終結とグローバリゼーションの進展を色濃く反映するものと見ることができ、いささか皮肉を込めて「持続可能な発展の民営化」と呼ばれることがある。」
第2章 国際環境法の特徴
30頁:パッケージディールの説明、妥協と交渉。コンセンサス方式、紳士協定と共に第3次国連海洋法会議での政策決定の3つの礎石。
47〜50頁:環境問題とNGOの参加。NGOのマイナス面とプラス面。
第3章 「国際環境法の基本原則」とは何か
62頁:国際環境法は地球環境が不可分か、国家領域かという矛盾の解決を主要な課題とする。
70頁:「天然資源に対する永久的主権」「人類の共同財産」「人類の共通関心事」
74頁:CDBは人類の共同財産の概念を取り入れず生物多様性の保全が人類の関心事で諸国が自国の生物資源について主権的権利を有することを確認した。
77頁:自然環境自体を保護法益として守らなければならない法意識が登場。兼原論文要確認(国際法学会2001)
第6章 持続可能な発展
149頁:持続可能な発展の起源について書かれている。
6、7章は開発論の視点からも興味深い議論だ。
いくつか湧いてきた疑問として、途上国と言っても14億の中国から1万人のパラオまであって、環境と開発を10ぱ一絡げに語れないはず、と思うのだ。
そして、環境問題で無視できないのがナチスの動物愛護法や緑の党の起源である。そんな事はこの本では触れられていない、というか触れられている文献を見たことがほとんどない。