やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

エコロジー帝国主義批判

17799225_1153272118132874_8286955779919916844_n.jpg

下記のブログで紹介した、マレーシア、マハティール首相のエコロジー帝国主義批判を議論している熱帯林開発に関する論文を確認した。

 

  村尾行一著、「第5章 東南アジア林業の逆説」(第2部森林資源の管理問題、有木純善編著『国際会時代の森林資源問題』)日本林業調査会、1993年、東京

 

愛媛大学名誉教授の村尾行一先生、ウェッブ検索するとどうやら名物先生らしい。 上記のペーパーには、1992年マレーシア連邦農林省が1992年5月、まさに翌月リオデジャネイロで開催された「国連環境及開発会議」にぶつけるように発行した"Forever Green, Malaysia and Sustainable Forest Management" から多くを引用しつつ、先進国やNGOの「エコロジー帝国主義」を批判している。

村尾氏は、リオより20年前のストックホルムで開催された「国連人間環境会議」でも、先に環境破壊をしつくした先進国が途上国に開発を留まるよう諭すことに、途上国が不満を示していた事を指摘する。(125頁)

そしてリオでは「全ての種類の森林経営、保全及び持続可能な開発に関する世界的合意のために法的拘束力のない権威ある原則声明」という森林原則声明が採択され、森林開発が主権の範囲である事を明確にした。特に、同声明の下記の項目が重要であるとのこと。(下線は当方)

(a)国家はその開発の必要及び社会・経済発展の水準に従い、また、持続可能な開発及び法制度に合致した国家政策に基づき、森林を利用、経営、開発する主権的かつ不可侵の権利を有し、それは総合的社会経済開発計画の下で合理的な土地利用政策に基づき林地を他の用途へ転用することを含む。 (「全ての種類の森林の経営,保全及び持続可能な開発に関する世界的合意のための法的拘束力のない権威ある原則声明」より、http://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/docs/19920614.D2J.html )

他に村尾氏のペーパーで興味深かったのは、マレーシアは1901年には既に森林官が任命され森林の持続的経営が開始していたこと。(124頁) そして、英語の"sustainable" がドイツ語の"Nachhaltig"の訳で、このドイツ語は18−19世紀のドイツでの森林利用政策であったこと。日本にも明治時代に「保続」とこのドイツ語を訳していたことが紹介されている点だ。(123頁)

それにしても森林開発だけではないこの「エコロジー帝国主義」はどこからくるのであろう?