やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著(読書メモ)その2

5センチほどの厚さがある『国際海洋法の現代的形成』

海洋法と法源論に分かれている。

この2日で読んだのが次の2章だ。

「第1部国連海洋法条約と海洋法の形成」の中の第1章国連海洋法条約に見られる海洋法思想の新展開、ー海洋思想の自由を超えてー

「第2部深海艇制度の成立と展開」の第5章深海底の法的地位をめぐる国際法理論の検討。ここでは人類の共同財産を扱っている。

この章を簡潔にまとめる能力はないので、気になった記述を書き出す。

まずは 第1章国連海洋法条約に見られる海洋法思想の新展開、ー海洋思想の自由を超えてー

p.8 海洋の自由が批判されたと言っても、その自由が根底から否認され、消滅してしまったわけではない。

p.9 EEZ200海里制度と深海底制度は 「一見するとそれぞれ全く異なった方向での主張、すなわち、前者は主権的権利が及ぶ海域を拡張しようとする主張であるのに対して、後者は主権的権利の否認前提にした主張であるにもかかわわらず、両者は公海自由の原則に対するアンチテーゼという点で共通しており…」

p.10 国家は海洋資源開発にあたっては他国の利益に考慮に払う義務が生じた。(これはノモス、植民のあり方、の問題ではないか?)

p. 12 「第二次世界大戦後、国際社会に新しく登場した多数の新興独立諸国は、そうした能力(遠洋漁業)を十分に持ち合わせておらず… 漁業の自由は実際には海洋先進国にのみ多大な利益をもたらすものでしかないことをが次第に明らかに」 (ここは本当にそうであろうか?漁業大国とすなわち漁業市場を持っている国と漁業を行うことで利益が得られるのではないか?ソロモンのマルハ大洋やニュージーランドニッスイ

p. 13 新し海洋法で、沿岸国の責任が書かれているが、小島嶼国はその責任能力がない!

p. 21 深海底制度に人類の共同財産の思想が入った理由には開発技術を有しない多数の諸国はなんの利益も得られない ー ここは議論の余地が。どんな利益?なぜ配分する必要がある?BBNJの議論に似ていない?

p. 25 - 26 米国は「人類の共同財産の原則と公海自由の原則は、必ずしもそうごに排他的な関係にあるのではなく… その収益の一部を国際社会に還元するなど…」  条約は開発から得られる収益の配分を行うだけでなく国際海底機構を通じて ー 深海底活動の管理、その活動への参加、生産制限や技術移転 を行うことによって人類全体の利益確保を目指している。

p. 35 「この条約が発展途上国諸国の期待を担って採択されたにもかかわらず、南北問題の格差是正が期待通りに進まない状況」(この点こそが、BBNJの議論をする以前に検証されるべきだ。そもそも南北間格差とは何か?資源量か?そうではないはず。)