やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著(読書メモ)その4

第2章 国連海洋法条約の成果と課題 ー 条約採択30周年の地点に立ってー 37-70ページ

この章は筆者の田中則夫先生が2014年に亡くなる前年の2013年に出版された論文である。

田中先生の最新の、そして最後の海洋法論文、なのかもしれない。

この章の目的を筆者は次のように述べる。「UNCLOSがカバーしている重要問題すべてに言及することは困難であるため、現代海洋秩序の構造を最も特徴的に表していると思われる問題に絞るかたちで、海洋秩序の構造分析を試みたい。」40ページ。

そしてUNCLOSは海洋環境の保護、生物資源の保存を含む海洋生物の多様性の保全が、海洋法の新たな展開過程になる。40ページ

ここから1972年の人間環境宣言から1992年のリオ宣言とアジェンダ21。このアジェンダ21が「海洋秩序のあり方を検討する場合の問題の所在を多面的に指摘した文書として重要…」41ページ

リオ+20では、海洋問題について詳述している。「海洋と海洋生態系の健康状態、生産性、復元力を保護し、かつ回復させ、現在と将来の世代が海洋の保護と持続可能な利用をなしうるために…」42ページ ここら辺かたら変になってきたんではないか?ナチス環境保護みたいな態度だ。鞆の浦でも行って数千年に及ぶ持続可能な沿岸管理を勉強すれば?

43ページから47ページ 漁業資源の保存と管理では、太平洋島嶼国の現実がわかる私には理想論、と言うか非現実的な話で、こんな理解を田中先生がされているなら、漁業資源管理を国際法では対処できていない、と思ってしまう。

47ページ 「第2に… 広い意味での海洋の保護、海洋生態系の保全策の一部に組み込まれつつある点は、十分留意しておく必要がある。」 一体世界中にどれだけ漁業資源保護の問題をわかっている国家、専門家がいるのか。。単なる弱者の恐喝ではないか。

47ページ 「海洋環境の保護および海洋生態系・生物多様性保全という課題に関する国際法の展開過程を簡潔に説明することは、実は至難の業と言わねばならない。それほど、この課題に関する国際法の展開は多様でありかつ多彩である。」続いてIMOの取り組みと地域条約の例が示される。

50ページ 地域レベルではUNEPが世界の海を18地域に分けて海洋環境の保護、海洋生物多様性保全に対する取り組みが定期的に報告されている。 太平洋島嶼国はどうやっているのか?SPREPがまとめているのだろうか?

63ページからは海洋生物多様性保全と持続可能な利用課題と題する節でUNCLOSと海洋生物多様性、1992年の生物多様性条約との関連が書かれている。

64ページ 多様な展開として、1995年のジャカルタ・マンデイト、1999年の非公式協議締約国会合設置決定、2003年以降海洋の生態系の保護、海洋生物多様性の保護、海洋遺伝資源、というテーマが連続して取り上げられ、その中でBBNJが提議されてきたことが指摘されている。

67ページ 2012年の第5回BBNJ WGでは国際法を巡って認識いギャップがあったこと、科学的基本情報を含め対処すべき課題を明確する作業が重要との見解もあったことが書かれている。

6のおわりに、では、国連が UNCLOS採択30周年ビデオを作成した際、1945年のトルーマン宣言が海洋の自由を最初に挑戦したことを取り上げていることを批判。田中先生は17世紀以来の海洋自由の原則を基調にした海の秩序を転換させたのは「国際社会の構造変化を背景にした、UNCLOSの採択」である、と主張。68ページ。「国際社会の構造変化」の中には多数の小島嶼国、沿岸国の誕生も含まれるのではないか、と思う。