やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ニュージーランドの水産業を支えるニッスイ(2)

まだこの問題を扱った報告書などはないようで、主にニッスイとシーロードが発信している情報をたよりにまとめて行きたい。

決してニッスイ関係者でもお金をもらっているわけでもありませんが、ブルーエコノミーというフェイク政策を進めようとしている世銀などにまた太平洋島嶼国が騙されているのが見過ごせない。

 

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ニッスイが世界ネットワークを展開したのはそんなに昔の話ではない。

平成18年の水産政策審議会企画部会 第5回漁業経営・資源管理小委員会速記録があった。ニュージーランドのシーロード始めグローバルネットワークを開始した元日本水産株式会社代表取締役社長、垣添直也氏のコメントが出て来る。

http://www.jfa.maff.go.jp/j/policy/kihon_keikaku/pdf/keiei_giji_5.pdf

興味深いのは、ニッスイが取得したシーロードの株50%は使用権であり所有権でない、という垣添直也氏の主張だ。これは管轄権の議論、統治委任の議論になんとなく近いような気がする。

ニッスイのおかげでニュージーランドの水産業はグローバルに展開し、雇用も、先住民マオリ問題にも寄与しているのである。

下記長くなるが引用する。

「私はこの問題はニュージーランドのシーロードに50%投資するときも同じ物の考え方でニュージーランドの政府を説得させていただいたのですが、25%しかだめと当時ニュージーランドは言いました。だけど、いわゆるクオータの所有権とかクオータの使用権を分けたらそのことは成り立つのではありませんかと。したがって、ニュージーランドの政府はクオータの所有はニュージーランドで、日本はいかないと。だけど、50%日本水産が使用権の中で発揮することについてはオーケーだということで決まりました。この問題もそういうことではないかと私は思っているんです。いろんな権利があります。その所有権と使用権を分けて、使用権は使用することによって最大の価値を出す人が受けたらいい。」

そしてニッスイがグローバル展開する経営哲学が下記に書かれている。資本支配ではなく価値観の共有。新渡戸が、矢内原が聞いたらどんなに喜ぶか。これこそ、日本が目指した本来の植民政策であり、膨脹であったと思う。

「そこで、私は日本水産としてちょうど2001年の1月にグローバルリンクスというコンセプトを出しました。これは下に書いてあるとおりでございますが、資本で支配するのではなくて、物の考え方を共有できる人、持ち株は25でもいいじゃないかと、あるいは50でもいいじゃないかと。要するニッスイの連結会社にはしないけれども、一緒に仕事をしていこうと。一緒に価値をつくっていこうと。こういうネットワークをつくりたいということで、結構たくさん手が挙がりまして、結果としてはここに書いてある漁業でいいますと、シーロード ニュージーランドの会社であります それから チリの会社のフリオスール 、 。、 、それからアメリカのアラスカ・オーシャン・シーフード、こういうような会社の株、これは一番多くても50%を持って我々と一緒に仕事をしています。その商品を売る仕事ではヨーロッパに3つ会社を持ちました。いずれもマジョリティーを持っていません。我々はマイノリティーですけれど、イベリア半島と北欧と、もっと東に売るようなそういう会社をつくった。そういうことであります。」

では実際にニッスイはどのように「一緒に仕事をしていこうと。一緒に価値をつくっていこうと。」としているのか?