ニュージーランドの防衛白書はまだ読んでいないが、人口500万の「小国」ニュージーランドは色々な意味で戦略的に重要なのだ。中国に早くから狙われ、西側諸国の中では宥和的対応をとっている。
ニュージーランドは南極、自由連合のクック諸島、ニウエ、自治領トケラウの権益がある。5アイアズの切り崩しの標的にもなる。詳細は以下のブログに以前書いた。
なぜ中国はニュージーランドに関心があるのか? - やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa
防衛政策は今回の報告書ではかなり中国に厳しい姿勢をとったことが、ニュージーランドの中国ウォッチャーでもあるブレイディ教授の分析からわかる。
外交政策はどうか?
The move towards a more Māori foreign policy
実は手元に未公開の報告書がある。内容はこの記事と同じだ。
現ナナイア・マフタ外相はマオリ人で、マオリの視点をいかにして政策議論に取り入れるかを課題としている。
マフタ外相は、演説で、
「マナアキ(親切、善意の交換)などの価値観」を挙げ、ティロハンガ・マオリ(マオリの世界観)をその役割の最前線に据えた。
マヒ・タヒとコタヒタンガは、集団的利益と共有された願望。
「これらの価値観は、関係性の中で表現されたとき、すべてがつながり、目的をもっているという感覚を与えてくれます。今世界が必要としているのは、共感、持続可能性、そして世代を超えたウェルビーイングのための解決策へのコミットメント」
「私たちは、外交政策や私たちのバイカルチャー的価値観を考慮し、私たち自身の経験を生かすことで、他の国や経済と先住民の問題に対処する方法について、異なるつながりを生み出す方法を確実に進めているのです」。
ここにある「バイカルチャー」とは白人とマオリのことである。移民国家ニュージーランドにはマオリ以外の島嶼国人口、そしてマオリ人口を超えそうなアジア、中国の人口がある。
西洋の世界植民行動の中で、ニュージーランドのみが先住民保護に成功しているといえよう。北米大陸、豪州は80%か90%の先住民が殺されたり、伝染病で亡くなった。
ニュージーランドマオリの権利は国連の自決権を含む様々な合意で支持されており、隣のニューカレドニアの独立や太平洋島嶼国全体の動きにも関連している。
しかし「自決権」という曖昧な概念が先住民の権利を守りながら他者を排除するという、側面を見逃してならない。
友人のマオリ人に独立の話をした時「北のマオリ人より、白人の方がいいんだよ」と言われて初めて気がついたのだが、マオリには多くの部族がいて、常に争っていた(いる)のだ。南島のマオリは一部族だけなので平和的である、とのこと。彼らの漁業産業を支援しているのが日本のニッスイである。