やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ニュージーランドの水産業を支えるニッスイ(4)

 ニュージーランドのシーロードが、ニュージーランド中から嫉妬されるほど成功しているのは知っていた。断片的に情報は得ていたが、今回まとめてみて改めて学ぶ事が多かった。

 オーストラリアとニュージーランドへの中国の大型投資が批判される中、日本企業も積極的に投資している。しかし日本企業の悪いニュースは聞かない。中国と日本の違いはなんであろう?それが一つの疑問だった。

 もう一点は太平洋島嶼国が資源を、経営を囲い込むブルーエコノミーという実態のない政策が進められている中、同じ広大なEEZを持つ小国ニュージーランドの水産業の成功が、実は日本企業との連携であった、即ち囲い込まないことであるという事を太平洋島嶼国に伝えたい、という思いがあった。これは来週英文の記事が出る予定だ。

 下記の投資家にいかにニュージーランドの水産業が魅力的か書かれた政府公報から興味深いグラフを紹介したい。

THE INVESTOR’S GUIDE TO THE NEW ZEALAND SEAFOOD INDUSTRY 2017 http://www.mbie.govt.nz/info-services/sectors-industries/food-beverage/documents-image-library/folder-2017-investors-guides/investors-guide-to-the-new-zealand-seafood-industry-2017.pdf

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 ニュージーランドのトップ2のSealord と Sunford。どちらも日本の水産会社が投資しているのである。サンフォードはマルハニチロだ。

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 この政府資料だと日本企業がどのように投資しているのかはわからない。今まで見て来たようにニッスイの投資はお金だけの投資ではないのだ。企業倫理から人材育成、グローバルマーケットへの展開と無形の投資が大きい。

 小国が大きな水産資源を得た場合どのような経営をすれば成功するのか? ニュージーランド政府がこれを理解できれば、同国がメンバーになっている太平洋諸島フォーラムに適切なアドバイスを与えられるのではないだろうか?

 またBBNJの議論等、自分たちの利益ばかりをヒステリックに叫ぶ小島嶼国に対して、資源や経営の囲い込みが自分達のクビを絞めるだけである事を説明できないであろうか?

 今回触れなかったがニッスイは薬品など、生物多様性の観点からも資源の活用を行っているので、同社の動きはBBNJと全く無関係ではないような気がした。 下記は偶然見つけた2012年の記事。マオリの意見が出ている。シーロードの成功をマオリがどう捉えているかよくわかる。資源を得られる以上に仕事が得られるかどうかの方が重要なのだ。

Sealord deal gives opportunities for Maori

http://www.stuff.co.nz/the-press/news/8023266/Sealord-deal-gives-opportunities-for-Maori