やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

もう一つの9条 ー 「公海漁業の規制」

小田滋『海洋の国際法構造』(有信堂、1956)の第3章は「公海漁業の規制」。

  • 海洋漁業の国際的規制について
  • 日中民間漁業協定の成立
  • 日ソ漁業条約の成立

の3節から構成されている。

 

「海洋漁業の国際的規制について」では、現在の排他的経済水域の200海里に繋がりそうな沿岸国の公海への権利の拡大が議論されている。「沿岸国の利益の独占、他国の利益の否定に他ならない... 公海漁業の規制についてとるべき手段ではない...」p. 83  小田教授は「沿岸国による一方的な漁場規制は、今日までの国際法の基本体系を破棄するものに他ならない。」とまで指摘する。P. 84 それは戦前から行われていたように国際的取り決めによって締約国の間で平等に抑制されるべき、権利能力の同一性が保障されなければならなかった。 p. 87

次に筆者は、1953年に効力を生じた日米加北太平洋漁業条約を批判する。沿岸国の優位を認めた米国に都合の良い条約であるだけではなく、公海漁業の利益を否定するために自国漁民の処罰をしなければならない、と。p. 111

この背景には日本の漁業をめぐる戦後処理として、平和条約9条の漁業協定交渉の受諾する義務が日本に課せられている。この「平和条約9条」の存在は知っていても具体的、専門的議論は読んだことがない。

日本の遠洋漁業こそが戦争の一因であり、戦後の国際的漁業交渉に始まる海洋レジーム、さらに200海里の天然資源囲い込みと小島嶼国の誕生につながるのではなかろうか。

 

第九条

 日本国は、公海における漁猟の規制又は制限並びに漁業の保存及び発展を規定する二国間及び多数国間の協定を締結するために、希望する連合国とすみやかに交渉を開始するものとする。

サンフランシスコ平和条約

http://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/docs/19510908.T1J.html