田中先生の『国際海洋法の現代的形成』に納められている第8章「国際法における海洋保護区の意義」を読んでいる。
EEZ、公海のMPAが実質的に行われて来た例を一般多数国条約で紹介し、続いて下記の4つの地域条約と米国、豪州の例を紹介。
i 1992年の北東大西洋の海洋環境の保護に関する条約(OSPAR条約)
ii 1992年のバルチック海の海洋環境の保護に関する条約(ヘルシンキ条約)
iii 地中海の海洋環境保護とMPAーバルセロナシステム
iv EUの保護区
以下、上記4つの地域条約の要点を書き出す。
i 1992年の北東大西洋の海洋環境の保護に関する条約(OSPAR条約)
1967年に起きたトリー・キャニオン号の重油流出事故がきっかけ。1998年にMPAに関連した附属書V「海洋区域の生態系と生物多様性の保護及び保存」がある。
ii 1992年のバルチック海の海洋環境の保護に関する条約(ヘルシンキ条約)
1994年に「沿岸・海洋のバルチック海洋保護区のシステム」(BSPA)を採択。同海域にはIMOのPSSA、EUのNatura 2000の制度が存在する。上記OSPARとのMPAネットワークの確立も検討されていた。
iii 地中海の海洋環境保護とMPAーバルセロナシステム
1976年の採択された地中海汚染防止条約。地中海に面する沿岸国の多くは領海の外にEEZを設定していないので領海の外が公海になっている。1995年の議定書で「地中海で重要性を有する特別保護区」(SPAMI)リストが策定された。2001年の会議で公海を含む12のSPAMIが承認。
iv EUの保護区
EUの法令として、1979年の野鳥指令と1992年の自然生息地・野生動植物の保全ー生息地指令がある。後者がきっかけで欧州生態ネットワークNatura 2000が制定。野鳥指令と生息地指令は構成国のEEZに適用。これはUNCLOSのEEZにおける海洋環境保護に関する機能的管轄権を沿岸国に与えている事と適応している。
米国
アメリカはMPAの設定に熱心な国。1972年「国家海洋サンクチュアリ法」があるが、MPAの設定は関連する国際法を遵守することが明言されている。他方チャンネル諸島国立海洋保護区は領海の外国船に認められる無害通航権に法的論点を提起。2004年にNOAAが北米海洋保護区ネットワークのため国家海洋保護区センターを設置。
メモ:ブッシュが退任直前に制定した太平洋の広大な海洋保護区は、遺跡保護法、グアノ島法 Oceans Act of 2000 が関連している事を以前書いた。
豪州
領海の基線より3カイリまでが州の管轄。その外から200カイリまでが連邦政府の管轄。MPAの国内法は2つあり、一つはグレート・バリア・リーフ海洋公園法。もう一つが環境保護および生物多様性法。豪州政府はMPAを国家管轄権外に拡大する事に積極的姿勢を示している。