やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

島サミット特集:海洋科学者はタヒチの55%の失業青年を救えるか?

今回の島サミットに仏領のニューカレドニア仏領ポリネシアから初参加。

この動きに多少の貢献をしたため、フランスの海洋研究所から日仏海洋対話の会議に招待された。

日本側はJAMSTECを中心とした海洋科学者の集まりである。

私が今学んでいる国際法、一つ目の博論の開発学、そして渡辺昭夫先生の下で学んだ国際政治と全く違う世界で勉強になった。

その中で、科学データ、科学情報の共有、が提案され、思わず反論した。

歴史を返り見れば科学情報、科学データこそが世界に混乱をもたらした要因である。

特にニューカレドニア仏領ポリネシアは独立の動きが常にあり、その独立を経済的に支える背景に海洋資源があげられる。それを独立後に管理・開発できるかどうかは全く無視してではあるが。

学情報の扱いには政治的状況を配慮し、細心の注意を払う必要がある、と。

私を呼んでくれたフランス側の海洋科学者は、途上国、特に沿岸途上国に詳しく、ローカルコミュニティの視点を強調していた。その中で彼が仏領ポリネシアの失業率が40%と言ったので俄かに信じ難く、世銀データを調べたら、なんと55%であった。15−24歳の青年層である。

海洋科学者は仏領ポリネシアで海洋調査をする事に熱心だが、55%の青年失業者には関心がない。というかそれが海洋科学者の基本である。だから責めているわけではない。

きっとパラオ海洋資源を調査し守る事に熱心でもパラオの子供達が麻薬に手を出している事に無関心であるように。。 

私は日本人の篠遠喜彦博士が考古学者でありながら、一人仏領ポリネシアで地元の伝統文化、歴史を復興し、文化的アイデンティティを支えた事も会議でコメントした。

海洋科学者が使う「SDGs2030アジェンダ」や「人類共同財産」とういう言葉が虚しく響いて聞こえたからだ。