やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『ソロモンに散った聯合艦隊参謀』高嶋博視著

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ルソーの妖怪「分離独立」が今も太平洋で蠢いている。
独立を問う住民投票が行われるのはニューカレドニアだけでなくパプアニューギニアのブーゲンヴィルでも来年2019年6月に予定されている。

PNG leader says Bougainville vote not just about independence

https://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/358184/png-leader-says-bougainville-vote-not-just-about-independence

 

ブーゲンヴィルには友人がいる。彼女が最初に私に歌ってくれたのが「ポポポ、鳩ぽぽ」だった。

戦後生まれのはずだから、戦前日本兵が教えた歌が歌い継がれていたのであろうか?パプアニューギニアの国父となったソマレ少年に自立精神を教えた柴田中尉のような日本兵がブーゲンヴィルにもいたのであろうか?

第40代横須賀地方総監。東日本大震災における海災部隊指揮官として災害派遣に従事された高嶋博視氏が『ソロモンに散った聯合艦隊参謀』を書かれていたので拝読した。

ブーゲンヴィルと言えば山本五十六だが、山本聯合艦隊司令長官と共にブーゲンヴィルで亡くなった樋端久利雄(といばな くりお)参謀の話である。

山本の代わりは見つかっても樋端の代わりはいない、と言われたほど優秀な軍人であった。

樋端始め、当時の海軍は米国と戦争をするば負ける、とわかっていたとのことだ。ではなぜ誰も止め用としなかったのであろうか? 

「経済力がなくなると思想が混乱し、その混乱が内部崩壊を招く。米国は天皇政治を問題とするであろう。そうなれば明治維新前に戻る。」

という分析を当時の軍人がしている。

明治維新とは天皇を担いでどうにか日本を統一させた以前の日本人同士が戦った血みどろの状況、ということであろうか?そうであれば日本が欧米の植民地となる可能性が出てくる、と考えたのであろうか。p. 164

ソロモン諸島のガダルカナルへの日本軍の進出は米豪分断が目的であった。帝国海軍がガダルカナルの空港を完成するのを待っていたように米軍の攻撃が開始。1942年8月7日から12月31日までその戦いは続いた。そのガダルカナル戦の最後の方で樋端は聯合艦隊参謀に配置される。つまり負け戦の後始末を任されたわけである。p. 177-178

山本がラバウルに飛んだ理由を著者を「日本という国が崖っぷちに立たされれているこの期に及んで、海軍内部でさえこのような情けない状況であった。」と痛烈に批判している。すなわち軍事的な必要性ではなく組織内の面子を守るためで、山本も行く必要はないと考えていた。p. 191

山本五十六がブーゲンヴィルに飛んだ理由を初めて知った。「前線視察」だ。これも行かなくても良い、重要性が高いとは言えない飛行だ。しかし、前線将兵の鼓舞激励と傷病兵にこだわる山本長官の気持ちを変えることはできなかったし、「前線視察」を無線で通達していたことで敵に暗号が解読されていたことを誰も疑わなかった。 著者は当時の聯合艦隊司令部、航空部隊、そして陸上部隊の現状認識に大きな乖離があることを指摘している。p. 225

 

軍事のことは正直わからない。読んでいてもわからなかった。。。

しかし1943年4月18日にブーゲンヴィルで亡くなった山本と樋端の後、誰もこの戦争を終わらせようとしなかったのであろうか?

日本軍が米豪分断のために作ったガダルカナルの空港は戦後ヘンダーソン国際空港と命名。2000年にホニアラ国際空港に。

今回の島サミットでは、日本政府が43億6,400万円この空港を整備することとなった。遺骨収集もされるのではないか。

ここには太平洋諸島フォーラム漁業局があり豪州海軍の拠点でもある。違法操業取締の拠点だ。日本の海上保安庁では対応仕切れないのを私は現場で見てきた。海保は尖閣で手一杯である。

日本の海自が出ていく機会はないだろうか?違法操業監視でも、離島災害支援共同訓練でも。。現地にはクアドの協力枠組みがある。即ち米豪NZ仏だ。日本からは海保、海自、水産庁の3つのシーパワーを同時に参加させるべきである。