やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

キャンベル元国務次官補が絶賛する日本の漁業交渉

アイランドホッパーでもあるキャンベル元国務次官補が、日本の漁業交渉を絶賛している記事を発見。

『キャンベル氏は、台日漁業取り決めについて「領土問題を棚上げすることによる資源の共同開発の実現」としながら、国際社会からその成果が過小評価されていると指摘。また、この台日の取り組みは、他の国々がナショナリズムなどに起因した問題を解決するための手本になるとの考えも示した。 」

台日漁業協定が「紛争解決の手本」=米前国務次官補(フォーカス台湾2013.1.16)

http://japan.cna.com.tw/news/apol/201401160004.aspx

 

この交渉、昨年の4月に締結。現場漁業者の頭越しに、首相官邸主導で行われ、現在でも操業のルール作りが関係者の間で行われている。

漁業交渉が領土問題、海洋安全保障問題つながって行く。

(下記の台湾漁業署長のインタビュー記事が興味深い)

 

 <宮原を知っているか?>

豪州海軍RANもハワイの太平洋海軍PACOMも、広大な太平洋の安全保障は違法操業監視。

よって、当方も最近は漁業関係者とのコミュニケーションが多くなっている。ナウル協定、フォーラム漁業局FFA、ピュー財団等々。

そこで一様に言われるのが、「Do you know Miyahara? 宮原を知っているか?」なのである。まるで通行手形のように、知らないと相手にもしてもらえない気配。

しかも、みなさん一様に目を潤ませて、尊敬と敬意を込めて宮原さんの名前を挙げる。

 ー 尋常ではない。

 

ソロモン諸島のガダルカナルにあるFFAと言えばオーストラリアの、豪州海軍の牙城。漁業問題で日本と対立する急先鋒みたいな存在、と理解していた。

そこの実質トップのオーストラリア人(男性)まで目を潤ませて「宮原さんに感謝していると伝えてくれ」と。「な、何があったんですか??」と当方。「日本の漁業交渉はすごいんだ。資源管理以前の問題。即ち島嶼国との外交のツボがわかっているんだよ。」

漁業問題ー複雑怪奇にしてかつハイポリティックス。実は今まで距離をおいてきたが。

 

 

<宮原次長に会う。>

年明け。笹川会長との面談の後は、寺島常務との面談であった。いつもながら中身が濃い。

日本の海洋外交は水産庁にあり、という話になり宮原さんの名前が挙がった。

「早川さんも一度会っておくといいでしょう。」

寺島常務は目の前で電話してくださり、アポが取れてしまった。

それで昨日お会いした。

日本の水産行政。漁場の拡大路線から資源管理へ舵取りをしてきたとのこと。これが2000年辺りかららしい。

宮原次長14日付けで退官されている。資源管理の路線は引き継がれるのですか?との当方の質問に「勿論」と答えていただいた。しかも「太平洋は引き続き関心をもってやって行きたい。」と心強いコメントまで。国際交渉は農林水産省の顧問としてひき続きご担当されるそうである。

 

<水産省のデジャブ>

水産庁のビルを出てすぐ、デジャブに気づいた。

宮原次長の日本の水産行政に対する反省のコメント、以前にもあった。

 

「しかしながら、同じく報告書第二章において指摘されておりますごとく、日本漁業は過去において国際関係を無視し、ために幾多の問題を生ぜしめたことによりまして、遺憾ながら日本漁業に対する世界の眼は確かに猜疑的であり、同情も薄いのでありまして、これを緩和しない限り、日本漁業の国際復帰はおそらく不可能であるのみならず、講和條約に際して、むしろ封じ手を打たれぬとも限らないことをおそれるものであります。」

 

これは昭和24年の水産委員会で「水産省」設置を提案した議員(当方の叔父さん)の発言である。

ブリストル湾事件が語るように日本漁業は日米摩擦、太平洋開戦、戦後のトルーマン宣言を導いた。GHQから、庁レベルじゃなくて省レベルでやらなきゃ駄目でしょう、と諭されたのに、未だ水産行政は庁レベルである。

太平洋をよく知る宮原さんと息のあった面談内容の一つが「オールジャパン」でやりましょう、という事だった。

 

<参考記事>

「台湾漁業署長インタビュー(上)「主権より漁業、最後は政治決断」 台日漁業協定」

フォーカス台湾 【政治】 2013-04-29

http://japan.cna.com.tw/search/201304290007.aspx#.UtqL0UchSQQ.twitter

 

「台湾漁業署長インタビュー(下)「北京の介入は望まない」 台日漁業協定」

フォーカス台湾【政治】 2013-04-29

http://japan.cna.com.tw/search/201304290008.aspx#.UtqNAgbpEfc.twitter