やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

島サミット特集:安倍総理スピーチの分析評価 - 危険思想「青い大陸」(追記)

「首相の国サモアで先ごろ会議を開いた太平洋諸島フォーラムが,「青の大陸」という言葉を打ち出しました。

 その意味は,「太平洋」。青くて広大な海への,敬意に満ちた言葉ではありませんか。

 「緑を守れ」というのと同じ情熱を込め,私たちはもっと,「青を守れ」と申しましょう。

 海が,悲鳴をあげているからです。」

(追記)

「海が劣化し,法の支配が踏みにじられるのを阻むため,行動へと一歩を踏み出そうではありませんか。」

「皆様には,日本の漁業活動に,格別の配慮をお願いしたいと思います。他方,皆様自身の警備力,資源保存の能力を高める力添えは,日本が,自信と誇りをもって担える役割であると思っています。」

もしかしてこの部分が、危険思想「青い大陸」への痛切な批判、牽制かもしれない。

第8回太平洋・島サミット(PALM8)首脳会合における

安倍晋三日本国内閣総理大臣の冒頭発言

(平成30年5月19日,福島県いわき市

http://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/ocn/page4_004025.html

「青い大陸」と聞いて中国の「海洋国土」を思い出すのは私だけであろうか?

「海洋国土」とは海洋空間を領土と同じように扱う、独自解釈をする中国の危険イデオロギーである。国連海洋法の曲解。まさにこの事が南シナ海の問題となっており、米国が「航行の自由作戦」行っている理由である。

さらにこの「青い大陸」(というイデオロギー)は中国べったりのサモア、トゥイラエパ首相が主導している事は要注意だ。

同首相は最近も「グアムに米軍基地があって問題ないのだから、中国軍基地ががサモアやバヌアツにあっても問題ない。」と公言しているのだ。

この危険思想「青い大陸」が太平洋諸島フォーラムの合意事項になっているのはさらに深刻だ。太平洋島嶼国には国際法の専門家はいない。領海とEEZの管轄権の違いがわかっていない。偉大な海洋民族の末裔は遠洋に出たすらないのだ。

太平洋諸島フォーラムは太平洋諸島のアセアン版。下記のサイトになんと書いてあるか引用しておく。

The Blue Pacific: Pacific countries demonstrate innovation in sustainably developing, managing, and conserving their part of the Pacific Ocean

https://www.forumsec.org/the-blue-pacific-pacific-countries-demonstrate-innovation-in-sustainably-developing-managing-and-conserving-their-part-of-the-pacific-ocean/

"The Blue Pacific is the world’s largest oceanic continent"

「青い太平洋は世界最大のオセアニア大陸である」

"The Blue Pacific aims to strengthen collective action as one ‘Blue Pacific Continent’ by putting The Blue Pacific at the centre of the regional policy making process and the requisite collective action for advancing the Forum Leaders’ Vision for the Region."

「青い太平洋は青い太平洋大陸として強化される集団行動であり、地域ビジョンを進める不可欠な政策の中心が青い太平洋である。」

" Pacific Island countries and territories to be part of a gigantic oceanic continent."

「太平洋島嶼国と地域は広大なオセアニア大陸の一部である。」

太平洋島嶼国も既に海洋法を無視したEEZの独自管理の国内法(商業漁業禁止)を制定してしまっている。(パラオキリバス

安倍総理がこの「青い大陸」に賛同してしまって良いのか、疑問である。

私の勘違いであれば良いが。言葉、というのは重要だ。

今回の島サミットで海洋に関連した法支援を打ち出した事は意味があるのだが、外務省、法務省、それから水産庁、わかってるかな?