やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

Boe Declaration on Regional Security ボエ宣言ー太平洋の地域安全保障

www.forumsec.org

安倍政権の第8回島サミットは海洋安全保障を前面に、明確に示した。そしてその波及効果が次々と出て来ている。

9月にナウルで開催された第49回太平洋諸島フォーラムの主要議題は「安全保障」Boe宣言が豪州ニュージーランドを含むフォーラムメンバー国で承認された。

10項目ある。 大雑把に日本語にしてみました。

1. 気候変動が最大の脅威でパリ協定を進める
2. 地域の地政学を含む複雑な安全保障
3. 私たちの青い太平洋の資源、人を守る集団安全保障の強化
4. 各国の主権が尊重されること。(中国とどうしようとお互い文句を言うな、とい意味であろう)
5. 安全保障に関する個別のまた地域の声を尊重
6. 国連憲章に則った国際秩序を遵守
7. 伝統的、非伝統的安全保障への対応
i. 人間の安全保障
ii. 環境資源安全保障
iii. 越境犯罪
iv. サイバーセキュリティー
8. 国家安全保障が地域安全保障に連結
i. 国家安全保障戦略の強化、能力向上
ii. 既存の地域法執行機関の強化
9. 安全保障概念の拡大
i. 緊急な安全保障の認識
ii. 既存の安全保障機能の強化
iii. 対話の情報共有の強化
iv. 早期警報システムの強化
v. 実行支援
vi. 地域安全保障の分析、評価、アドヴァイス
vii. 協力関係の拡大と強化
10. 私たちの青い大陸の守るため引き続きリーダーが協議を継続する
 
<分析>
気候変動がsingle greatest threatというのは、現在取締が強化されている麻薬問題など目の前の安全保障、島嶼国の法執行能力では管理が難しい安全保障は棚上げされたという事ではないか。
安倍総理が、また堀井政務官が表明した海洋安全保障は島嶼国政府が対応できない(沿岸部以外)分野である。

堀井巌外務大臣政務官(総理特使)の太平洋諸島フォーラム(PIF)域外国対話出席 | 外務省

もう一つ気になったのがOur Blue Pacificとこれも海洋の自由を無視するような、「青い大陸」という表現につながる価値観が押し出されていることだ。
Blue Pacific, Blue Economy もそうだが権利だけ主張し海洋法条約にもある管轄権内の沿岸国の「義務」に触れられていない。
実は安倍政権の島サミットはその事をサラッと言ってしまったのだ。日本が支援しますよ、と。それで豪州、ニュージーランドは慌てたワケである。裏をとっていないが、ミクロネシア海上保安事業を立ち上げた当方は豪州、ニュージーランドのパラノイア的反応を見て来たので手に取るようにわかる。
 
<追記> 下記の分析にある都市の問題と青年層の問題は気候変動よりも一層深刻である。