やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『ドイツ植民地研究』栗原久定著 (読書メモ)4・5章

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栗原久定著 『ドイツ植民地研究』の4、5章はカメルーン、東アフリカが紹介されている。

カール・ハウスホーファーを読むと彼が、ドイツ国民が第一次世界大戦で植民地を失った恨みがどれほど大きいがわかるのだ。その恨みがヒトラーを、ナチスを誕生させたのではないか、と思える程。

それほど重要な植民地の様子がカメルーン、東アフリカへの植民で伝わってくる。

植民地アフリカの先住民との戦いだけでなく、近隣の英国、フランスとも戦い多くの命を犠牲にして得た植民地である。多額の投資をし、多くのドイツ国民が移民もした植民地だったのだ。多分、だがこの植民でドイツ人のナショナリズムが強化されたのかもしれない。

戦争は、ウィルソンが戦争責任を言い出すまでは喧嘩両成敗で敗戦国が罪を着せらるようなことはなかった。それほど敗戦国ドイツへの仕打ちは酷かったのだ。

海洋の観点から、298−299ページで紹介されている英国のインド洋の地図と筆者のその分析が興味深い。オーストラリア、インド、アフリカ等の英国植民地が囲っているインド洋は英国の閉鎖された海洋であったのだ。英国は徹底した独占体制であったはずだ。少なくとも通信政策はそうであった。資源を囲い込み、独り占めする。戦後、英国が劣勢になると「人類共同財産」などとマルタのパルド大使に国連総会で演説させて(これは米国の意見)自分たちがしてきたことを他国がしないように動く。特に小島嶼国をたくさん誕生させて英連邦のネットワークで維持しながら。。やはり世界で一番恐ろしいのはロンドンのシティかもしれない。