平成30年11月16日 イクシス記念式典 安倍総理挨拶 は下記のサイトで全文が読める。
太平洋を中心に日豪関係を追って来た当方にとっても感慨深い内容だ。メディアはダーウィンの慰霊ばかりを取り上げるが、実は豪州北部こそ日本人が真珠貝養殖などで戦前開発してきた地、なのである。白人移民の狩りの対象とされた先住民アボリジニと結婚した日本人移民はその現地アボリジニの方々と家族を作った。今でも日本の苗字を持つアボリジニがいるそうである。(ANUで研究するフィリピン研究者の発表にあった)
日本企業の対外投資400億米ドルによるイクシスLNGプロジェクト
ニッスイの北部準州におけるブラックタイガーの養殖
ビクトリア州で始まる、日豪をつなぐ液化水素水素
白豪主義で豪州から追い出された日本人の事を知ると、そして戦後の経済協力への先人達の努力を知ると、この日豪関係の躍進は感動的だ。
しかし、この翌日行われた海保の訓示の中にドキッとするような言葉が現れて来る。
「生命線」だ。
「ダーウィンは、太平洋とインド洋を結ぶ「戦略的要衝」で、中国による人工島の軍事拠点化が進む南シナ海に近い。首相は「我が国にとってオーストラリア周辺は海上物流の生命線とも言える重要な海域だ」と強調した。」
これでは戦前の戦争に突き進むアジア地域主義と同じになってしまう。安倍総理も安倍政権も意識しないでこの言葉を入れたのかもしれない。
しかし日本は1931年ごろ「満蒙は日本の生命線」と主張し始めた頃から、外交政策がおかしくなったのだ。国家を生き物に例え、生命圏や生命線と表現するのは止めた方がよい。
北部豪州の日本の開発でバーミンガム豪貿易相は「輸出で数十億ドルを豪州にもたらし、600人の雇用と数千の関連ビジネスを毎年生む」と紹介したではないか?
誰の生命線なのか?日本に繋がる海上物流海域は太平洋島嶼国始め多くの小島嶼国のEEZ管轄権内となっている。生命線の周囲の人々の事を忘れている。それこそ「米国ナンバー1」と唱えるトランプ大統領と同じになってしまう。
渡辺先生曰く戦前のアジア主義の議論は複雑だという。私も勉強し始めたばかりだが、少なくとも日本が「生命線」という言葉を使う時、世界は満州事変につながるイメージを持っているはずだ。
安倍総理の演説に「生命線」は不要!