やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

クレオ・パスカルが語るアフガンとインド太平洋

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パラオ柔道キッズ・パラオポリスアカデミー、道着支援のファンドレジジングトークを企画した。七夜連続の最終日、8月20日は今年3月にロンドンのチャタムハウスから報告書を出したクレオ・パスカル女史をお招きした。

この報告書が調査対象とした6カ国(英米仏印中トンガ)がインド太平洋における日本をどのように見ているか、という詳細を語っていただいた。2020年3月でフィールドスタディを終えた後、パンデミック、香港問題で世界が大きく変わる中、6カ国の中国への姿勢も経済と防衛のヘッジングから、中国警戒に大きく変わった事が説明された。

 

パスカル女史は地球の裏側、ワシントンD.C.にいた。実はアフガニスタン情勢に関するワシントン情報も聞きたかったが、早朝に起こしてさらに一銭も払わないボランティア講演である。遠慮していたところ本人から話が出て来た。ワシントンD.C.の興奮が伝わってくるようなレポートであった。

 

その中で衝撃的だったのが、米印関係の悪化である。インドとアフガニスタンの関係は数世紀に及び、近年ではインドから巨額投資もされている。アフガニスタンから多くの学生がインドに留学し、そのまま滞在しているという。今回のアフガニンスタンの惨事はそのままインドに影響する。さらに中国、ロシアの関係もある。世界の力関係が一気に変わる。

インド太平洋構想を支えるクアドは当面米国抜きのトライアドで動くしかない。2022年の米国議員選挙では今回の件を受けて共和党が勝利をおさめるであろう。2024年の大統領選は?ポンペオ氏の動きが気になるところだ。

日本の反応はどうか?とのパスカル女史からの質問に、ある国会議員は米国が去った後の状況を日本に当てはめれば、日本は防衛能力を強化する必要がある、岸防衛大臣は防衛費GDP比率1%は上限ではないと明言している、と伝えた。パスカル女史からは We need a strong Japan more than ever! との反応。

 

さて、太平洋島嶼国とパラオに関連した事を書いておきたい。

別のブログで書こうと思ったが、台風のようにミクロネシア地域に戻ってきた米軍を見て、勿論その動きを2008年から支えてきた私は大歓迎だが、心配もある。もし中国の脅威が消えたら再び米軍は太平洋から去るのだろうか?

私は90年代初頭の冷戦終結後、米軍が一気に去った太平洋島嶼国の様子を目の前で見て来た証人である。米軍、そして8月20日からインド太平洋に派遣される日本の自衛隊にも伝えたいのは、インド太平洋の歴史・文化・習慣を学び女性・子供、即ち弱者への視点をもって欲しいということだ。

この事を書くために何年も前に購入したマクナマラのインタビュー動画、Fog of Warを見た。1995年マクナマラはベトナムを訪れベトナムの元外務大臣から怒鳴られまくった。

「ベトナムの歴史を学んだ事があるのか?あの戦いはベトナムの独立のためであった。我々は千年以上中国の奴隷であった。中国やロシアの駒ではない。」

マクナマラはベトナムの歴史を知らなかったのだ。

そこでパラオ柔道キッズ・ポリスアカデミー支援の意義を再考した。自分を、家族を、国を自ら守る。米国が突然いなくなっても惨事を招かないような国を作る。パラオの柔道師範であり国家安全保障局局長のジェニファー・アンソン女史は繰り返し私に言う。自分と他人を敬う精神と体を鍛えてくれるのは柔道しかない。

今回多くの皆様にご協力いただいた75着の柔道道着支援がパラオの人々の自律・自衛・自尊心向上に役立つ事を!

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