やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

パラオに押し付けられた船ーケダム

今回IPD21が共同演習したパラオの監視艇ケダムについて改めて書いておきたい。
防衛省が誤解しているからだ。この船は、日本財団・国交省がパラオ政府に押し付けた監視艇で、故障続きで使えない船である。日本への信頼を損ねた事業なのだ。今回の海上自衛隊共同演習。パラオ側から一度断られている。原因はケダムである。共同演習が了解されたのは、今回30名の方から寄付いただいたたパラオ柔道支援にある。ここは柄澤大使は十分ご理解いただいているはず。
 
押し付けられた船の原因は私が作った。
当初日本財団は小型監視艇を供与。これではEEZまで監視できない。沿岸管理も重要だが、違法操業はEEZで行われている。豪州の監視艇も遠くまで行けない。そこで当時水産庁次長だった宮原正典氏をけしかけて水産庁の監視艇(みはま、500トン)をパラオに派遣したのである。宮原氏から見れば私をうまく利用(良い意味で)した事業であったであろう。私が動けば事業は動くのだ。自慢ではない。30年太平洋で実績があるのだから当然だ。
 
この監視艇派遣はパラオ側に船舶の管理運営の負担をかけず、パラオ法執行官を載せて、IUU取締の基本から訓練できる最適な方法である。パラオ側にも歓迎されていた。パラオの海洋監視要員は25名ほどしかいない。そもそもEEZに出る、ということ自体が稀である。
 
ところが、国交省独占利権として開始したこの事業に水産庁が入ってくることに激昂した当時の笹川平和財団会長で国交省元審議官の羽生次郎氏が、中型監視艇ケダムを押しつけるようにしてパラオ政府に供与する事を決めたのである。
 
あの時の絶望感はまだ覚えている。またパラオ法務省の知り合いたちから「笹川は何をやっているんだ」と言われ、ことの経緯を説明し謝罪したこともある。日本財団と海保の造船利権はパラオ側はとっくにお見通しなのだ。
 
これがケダムが供与された背景だ。実は海上保安庁の関係者からケダムもひどい船であることを聞かされている。日本とパラオの架け橋どころか、橋を砕いている事業なのだ。
柔道支援は日本財団が、また笹川陽平がずだずだに砕いているパラオとの橋、信頼関係を維持したい、という思いで継続している。