やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『ナショナリズムの発展』EHカー(再読)

2018年に読んで再読したいとおもっていたEHカーのナショナリズムの発展。

1、ナショナリズムの極点 

2、国際主義の展望 

で構成され、後半は読んでいなかった。

1945年、戦争が終結する頃の世界秩序を議論している。カーは小国の存在を批判的に見ており、それは『平和の条件』の方で詳細に議論されている。

国家とは何か?が一番理解できる本だ。そして小国の限界を一番納得させてくれる。即ち小国の現実を40年近く見てきた私にとって深く共感を持って読める本であり、それがカーであったことは私とって幸運だった。

今回初めて読んだ「2、国際主義の展望」 の「原則と目的」という節に

「国際秩序の第一義の機能は、国際的現状維持や各国の権利の擁護ではなく、積極的な政策によって、すべての国々の一般男女の生活条件の改善を務めることでなければなるまい。」

とある。

これは今自分が目の前で扱っているソロモン諸島やパラオの安全保障が、その島の、特に弱者や離島の女性や子供の幸せを第一に考えなければならない、という私の開発、安全保障哲学に一致している。

カーは、1948年には国連の「世界人権宣言」起草委員会の委員長をしている。「すべての国々の一般男女の生活条件の改善」という視点が人権につながっているのであろう。

しかし、1960年代以降、カーが否定した小国よりさらに小さい極小国が次々と誕生した状況をカーはどのように見ていたであろうか?