やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

Indo-Pacific Engagement: Lessons for Canada from the U.S., Australia, and Japan

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カナダのConference of Defence Associations Instituteに参加する機会をいただきました。モデレーターのクレオパスカルから、日本の太平洋に対する見解を5分で、という要請。第一次世界大戦あたりから語りたかったのですが、恩師、渡辺昭夫先生が関与された大平グループの環太平洋構想から話しました。

要点を日本語にしました。

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太平洋をめぐる日本の安全保障の流れをどこから話せばいいのか?日英同盟下、要請を受け参戦した第一次世界大戦あたりから始めたい。が、今日ここで話せるのは全て恩師渡辺昭夫先生の存在があるので、先生を中心に。

まず1979年に大蔵官僚であった太平首相が環太平洋構想は発表。これがAPECそしてTPPに。この大平研究会メンバーの一人が渡辺昭夫先生。島嶼国研究を主導。大平首相はこのアイデアの英語タイトルに、Pacific Ocean Communityを最初につけた。ここにFree and Openの思想は既に現れている。

 

渡辺先生は冷戦終結後、防衛省主導の細川首相研究会で日本の安全保障政策を。1994年に発表された通称「樋口レポート」

‐The Modality of the Security and Defense Capability of Japan, The Outlook for the 21st Century日米同盟を基盤にした多角的安全保障。その多角的、とはまさに今議論されている経済安全保障などもはいる。このレポートに米国は大きく反応し、「ナイ・イニシアティヴ」が。日米の戦略対話が加速。

しかし2001年に9.11があっても日本の自衛隊は大きく動けなかった。

1995年の神戸大震災で日本国内の自衛隊に対する反感が議論.

2011年の東日本大震災で、自衛隊が国民の命を守る存在であることが浸透。

2008年、私がミクロネシア海洋安全保障事業立ち上げ頃は、自衛隊がRIMPACに参加することを批判的にニュースに書かれていたのを覚えている。

樋口レポートには中国の脅威の可能性も書かれているが、世界が明確にその意識を持ったのは安倍政権の遺産。2012年安倍総理のセキュリティダイヤモンド論文には、南シナ海を北京の湖にするな、という刺激的表現が。

私がミクロネシア海洋安全保障事業を立ち上げた理由の一つに、米国太平洋司令軍のキーティング司令官が、2008年に中国が太平洋を米中で分割しようと言っていることを公聴会で指摘したことに。

さらにパラオ高官を通じてキーティング司令官が「この広い太平洋を守れるのは日本と米国しかいない。しかしその日本の手足を縛ったのは米国である」と言っている事を知り、米国がそういう立場であれば、私がその紐を解こう、と決意。

 

2008年当時を思い出すと中国が脅威であると認識する人はほぼいなかった。しかし、ミクロネシア3カ国は海洋安全保障に関して、自国の能力ではカバーできず、シーシェパードや、グリーンピースと監視協定を締結する動きが。

日本が、ミクロネシアの海域に出てくる事を歓迎したのは当時のオバマ政権、クリントン長官とキャンベル国実次官補。大きく反対したのが豪州のラッド政権。また豪州王立海軍も赤道以北のミクロネシアまで自分達の「裏庭」という意識。

 

豪州はアボット政権になって180度日本への態度を変えた。2014年の安倍総理豪州訪問では日豪海洋協力百周年として、今月パラオに入った護衛艦きりさめが、 ANZAC記念式典のアルバニーに招待。

 

2017年に私は2つの議連勉強会に呼ばれ、安部政権のインド太平洋構想に海洋安全保障を提案。私は中国政府、犯罪組織、中国軍がどれだけ太平洋島嶼国に浸透しているかを国会議員に説明。安倍政権のセキュリティダイヤモンド構想との関連を衛藤晟一議員に聞かれ、島嶼国が形成する広大なEEZがほぼ無法地帯となっており、セキュリティダイヤモンド、インド太平洋、そしてクアドには島嶼国の海洋安全保障が抜けていることを指摘。クレオのアレンジで東西センターにも論文を。

1997年から開始した島サミットは20年後の2018年第8回目の会議でインド太平洋と海洋安全保障が議案になり、防衛省が動く結果に。

日本政府は太平洋島嶼国の事をよく知らず、人身売買、麻薬、マネーロンダリングなどのあらゆる越境犯罪が行われていることも知らない。幸い防衛省などから私に照会があり、島嶼国の安全保障の実態を教えている。中国の脅威は確かにある。島嶼国の政治・経済を含む安全保障は脆弱。中国だけでなくあらゆる犯罪組織が入り込んでいる実態。