やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

水産庁もミクロネシアの海上警備支援か?

水産庁もミクロネシアの海上警備支援か?

 

 スポーツ紙であれば、タイトルの「か?」の前で2つ折りにして出したい所である。2010年5月28日、海洋政策財団主催する第70回海洋フォーラムで興味深いニュースを得ることができた。

 

 同フォーラムは、今年3月末にドーハで開催されたワシントン条約(CITES)第15回締約国会議で政府代表として交渉の陣頭指揮を執った水産庁資源管理部の宮原正典審議官のお話であった。

 

 モナコ提案の大西洋クロマグロ(付属書I)についてはニュースでさんざん報道していたので知っていたが、パラオが付属書IIで4件も提案していたことは知らなかった。

 

 アカシュモクザメ及び4種の類似種(米国・パラオ提案)

 ヨゴレ(米国・パラオ提案、サメの一種)

 ニシネズミザメ(スウェーデン(EUを代表)・パラオ提案)

 アブラツノザメ(スウェーデン(EUを代表)・パラオ提案)

 

 

 結果は米国・スウェーデン(EU代表)が提案した宝石サンゴ科全種の提案も含め全て否決。宮原審議官にパラオ提案がどのように協議されたか質問したところ、興味ある情報をいただいた。パラオのサメは主に中国がフカフィレスープのために乱獲しているのが原因。よってワシントン条約に乗せるより、違法操業の監視が重要であるとパラオに説得した、という。さらに水産庁は今後パラオ及び太平洋地域の違法操業監視支援の検討に入っている、とのこと。

 

 笹川平和財団が進めるミクロネシアの海上保安案件に水産庁からネガティブな反応が出ていると耳にしていたので、これは驚きのニュースであった。ここは省庁の縦割り、NGOと官の垣根を越えて、水産庁、海上保安庁、そして 民間組織がAll Japanで手を組む時が来た、のではないか?

 

 先日発表された米国の国家安全保障戦略には”Whole of Government Approach” が述べられているし、“civil”の役割も強調されている。(同報告書にCivilは42回掲載されている。)ソマリアの海賊は漁業資源管理のミスの結果であることも加えておきたい。

 

(文責:早川理恵子)