日本の安全保障と防衛力の在り方を協議した「樋口レポート」は2代目の笹川太平洋島嶼国基金前運営委員長を私がお願いした渡辺昭夫先生(東京大学名誉教授)が書かれたものである。
ミクロネシア海上保安事業のきっかけとなった笹川陽平会長の「太平洋共同体構想」は私が意見を聞かれて提案したことが盛り込まれている。よって「樋口レポート」はつながっている。日本の多角的で、自主的な安全保障を主張している。
「樋口レポート」を読み返してみたら、海上保安庁の事も書かれていた。
改革の具体策の中に海上防衛力、という項目があり、海上自衛隊が海上保安庁と提携して法執行分野も取り組むべし、としている。
海保と海事の役割分担等、渡辺先生のご意見をお伺いしたい、と思っている。
(防衛問題懇談会「日本の安全保障と防衛力のあり方‐21世紀へ向けての展望‐」
1994年8月12日から引用)
(vi)海上防衛力 四方を海に囲まれた日本にとって,周辺海域の防衛や海上交通の安全確保は,有事における生存基盤,継戦能力さらには米軍の来援基盤の確保のために不可欠である。それだけでなく,平時における海上交通の安全確保は,エネルギー等の供給や製品貿易の海外依存度がきわめて高い日本にとって,死活的な問題である。また,海難救助,海賊取締り,麻薬取締りなども,海上保安庁と提携して,海上自衛隊が取り組むべき任務である。
予見できる将来,圧倒的な優位を誇る米国の海軍力が,太平洋をふくむ全世界の海洋の安全を維持する基本的な要素としてとどまるであろう。そのような米国海軍との協力関係を保ちつつ,日本の海上防衛力は,上記の任務を遂行する。
これまで想定されていたようなソ連の潜水艦等による本格的な海上交通の破壊攻撃の可能性は低下したので,従来重点がおかれていた対潜水艦戦や対機雷戦のための艦艇や航空機の数を削減すべきである。他方,よりバランスのとれた海上防衛力を整備することに意を注ぐべきである。たとえば,監視・哨戒の機能や,対水上戦,防空戦の能力などは,これまで以上の充実が必要である。また,国連の平和維持活動などへの参加も考えて,海上輸送,洋上補給等の支援機能についてある程度強化すべきであろう。
また,練度および即応態勢の向上をはかるため,艦艇の乗組員については,現在の一部未充足な状況を解消する必要がある。そのためには,上述した艦艇等の逐次削減の結果生じた要員を充てるという方法などを講じるべきであろう。