やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

裏金作りか、友達作りか

 30億円の笹川太平洋島嶼国基金は、兼任の室長、フルタイムの研究員とアシスタントの3名体制で進めてきた。過去20年、室長は10人程が入れ替わり、立ち替わり。

 

 その中に、発想豊かな方もいた。

「ハワイのビショップ博物館の篠遠博士と、京都大学の片山一道教授の洋上対談を企画するので、船を予約せよ。」との指示があった。

 船の予約は前金が必要であった。次年度事業でもあり、どこにも予算はない。

「いつでも自由に使える数十万円の現金を作っておくのが優秀な事務局である。」とのお言葉。

 それは裏金を作れ、ということだろうか?と迷いながらそんなお金は勿論ないし、作り方もよくわからないので、しかたなく自分の定期預金を解約。クルーズの前金2人分、数十万円を立て替えた。

 

 神様は見ているのである。その方は年度が明ける前にお辞めになった。

 同時に事業も流れた。自分で立て替えた船の前金は戻らない。観念して長期休暇をとり、クルーズに参加することにした。

 幸運にも、米国人のドキュメンタリーフィルム制作者が追加申し込みをした。一人分の前金は戻ってくることになった。

 彼女と同じキャビンで過ごした3週間。それ以来15年近く、友人付き合いをさせていただいている。

 

 もし裏金でクルーズの前金を払っていたら、このクルーズに参加しなかっただろうし、この友人には出会えていなかった。 京都でその話を始めて彼女にした。

 彼女からは、カリフォルニアの日系人収容所から出てきた日本人と家族付き合いがあったことを始めて聞いた。日本人に良いイメージを持っていた、という。キャビンメイトが日本人、と聞いてクルーズに参加することにしたのだそうだ。