やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『闘え!くじら人―捕鯨問題でわかる国際社会』山際大志朗著

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 『闘え!くじら人―捕鯨問題でわかる国際社会』山際大志朗著

 

速攻で読ませていただきました。

図書館が近くにあるのって便利です。

島嶼議連の事務局をされてる山際大志朗議員が平成20年に出版された本である。

 

正直、期待していなかった。国会議員の書いた本。表層的内容を予想していた。

予想は見事に裏切られ一機に読んでしまった!

山際議員、学生時代に捕鯨調査船に研究員として乗っていたのだ。しかも獣医学博士。

そして日本政府代表として捕鯨の国際交渉に参加し、欧米諸国政府や環境NGOの実態を、私以上に経験され、見抜いている。

例えば、同書の「穢れた”聖域”南氷洋サンクチュアリ」にIWC (International Wildlife Coalition)という実態のない組織を作り、小国の観光産業に圧力をかける卑劣な行動をしてきた事が書かれている。(30-31頁)

実はこの急ごしらえの環境NGO”連合”が海洋関連でも山ほどある。メンバーはいつも同じPEWである。

そして山際議員、シーシェパードと戦ってきたのだ。

知っていればパラオのシーシェパードの件、もっと熱を入れて話したのに!

「シーシェパードリーガルはあのシーシェパードとは違う団体です。」とのうのうとウェッブに書いていたのはパラオの日本大使館である。外務省が二度とこんな事をしないよう書いておきます。外務省叩きではありません。

同書151頁からは平成19年に行われた外務委員会での質疑が記録されており、山際議員は自らの体験から南氷洋に海上保安庁の巡視船を送る事を提案している。太平洋がシーシェパードやグリーンピースの違法行為にも「自由の海」、即ち無法地帯である事を充分ご承知だった。

水産庁取締船派遣の話をもっと強調すればよかった!

環境保護という名の美名の下の金儲け、これもしっかり書かれている。

環境信託基金の設置というタックスヘイブンの話ももっと強調すればよかった!

今まで、世界相手に一人で戦っているような気がしていた。

パラオのメガ海洋保護区を支援してはいけない、レメンゲサウ大統領の振り上げた拳の落しどころを考えなければと訴えて、水産庁取締船派遣を押したのである。小島嶼国に船を上げても管理運営が大変なのだ。(もし小国に供与するのであれば燃料メンテ等々丸抱えの日本財団方式)

環境NGOピューや日本のメディアが、日本人がマグロを絶滅させる!とプロパガンダを繰り広げる度に、このブログでも一言書いて来た。

先日隣に坐っていらした国会議員が、こういう経験と意見を持っていた方だったとは。。

鯨に関する本といえば『解体新書「捕鯨論争」』(石井敦編著、新評論、2011年)しか知らなかった。これは両者の立場を抑えて編集されたというが、どちらかというと反捕鯨の本である。バランスを取るためにも、この山際議員、山際獣医学博士の本は薦めたい。

このブログは、外務省も水産庁も読んでいると言う。

まずはこの山際委員の本を読まれたどうでしょうか?電車2往復位で読めます。

多分高校生でもわかるように平易に書いてあります。

明日のBehind the Cove上映&討論会にむけて、もう一つ目を通しておきたい文書がある。天皇陛下とイリオモテヤマネコとエジンバラ公の話だ。