やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

米国沿岸警備隊第14管区

 ホノルルに来ている。米国沿岸警備隊第14管区との会議が主な目的だ。

 2008年にミクロネシアの海上保安事業を立ち上げる作業をしていた時、まさか米国沿岸警備隊の中に入って、ポッセコミテタスアクトの話までする日が来るとは、想像もしていなかった。

 

 14管区レイ司令官は今年1月来日している。

 ランチタイムに招かれ、えひめ丸の慰霊碑が見える司令官のオフィスで、サンドイッチをご用意いただいていた。レイ司令官はUSCG初の中国リエゾンオフィサーで、マンダリンも堪能だそうである。

 日本のNGOが海洋安全保障面でイニシアチブを取る事に大変興味を持っている、進展を楽しみにしている、というお話だった。

 

 会議にはPacific Command, 海軍、国務省からも参加。総勢10名程度で3時間に及ぶディスカッションとなった。

 以前お伝えした、USCG(ヘラクレス)とNZ(オリオン)が実施したキリバスへの捜査隊派遣。事故が明らかになってから48時間後に第14管区に通報があった。支援にあたってはフィジーの米国大使館が公式な交渉窓口だったようだ。

 やはり費用は米国持ち。エアクラフト、ヘラクレスは1時間13,000ドルかかるそうだから1週間の捜査で数千万円か。

 費用も責任も危険も伴う他国の救難援助を誰が決めるのか?回答は「議会」だった。

 

 USCGが2007年頃から展開している、Ship Riders Agreementは現在ミクロネシア3国とクック諸島、キリバス、トンガと締結されており、現在さらに2カ国と交渉中。この枠組みが有効であることからさらに増やす予定とのことであった。

 

 肝心のポッセコミテタスアクト。military forceとcivil forceのあり方についての規定である。

 USCGが属するホームランドセキュリティ省と国防省で相互協力のMOA*がある。セキュリティのケースであればUSCGが、ディフェンスのケースであれば国防省が表に立って、協力する仕組みができている。

 さらに14管区にはDoDからのスタッフが一人入っており、どのような協力が最適か、ケースバイケースでアドバイスを受けながらcivilとmilitaryキャパシティの協力が進められるのだそうである。

 

 米国側からも我々の支援内容に関して突っ込んだ質問が相次いだ。こうした交渉、議論ができるステージになった事に感動してしまった。このようなプロセスを通して信頼関係が築かれていくのだろう。

 

 今日は朝からNOAAとの会合。午後はPEACESATとの会合がある。

 

 

* Memorandum of Agreement between the Department of Defense and the Department of Homeland Security for Department of Defense support to the United States Coast Guard for Maritime Homeland Security