やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

矢内原忠雄著『南洋群島の研究』を読む(1)

1935年に出版された矢内原忠雄の『南洋群島の研究』を読んでいる。

先般訪日したパラオ大統領が「日本とパラオは、国交20周年を迎えるが、戦争以前から関係があった。」と安倍総理との会談、記者会見等で繰り返し述べていた。 大統領の言う「戦争」とはWWIIのことで、日本との関係は、ドイツ領だったミクロネシア諸島をWWIで占領してから思い込んでいたのだが、違った。

ナント、「士族授産金」が、即ち武士救済費用がそのきっかけを作った。 1890年、田口卯吉(幕臣の子)が貿易船天祐丸による南洋渡航を、南洋開発を試みたのだ。

矢内原によればのこの試みは1年で頓挫し、非難を受ける事になったらしいが、これをきっかけに日本の貿易会社が次々にミクロネシア諸島に展開する。

ドイツがこれらの諸島を手に入れる頃、若しくはそれ以前の話だ。ドイツ領となった後も、特にパラオでは日本の貿易会社がほぼすべてを仕切っていたという。

日本ーパラオ、日本ーミクロネシアの関係は武士が作った。そしてそれは第一次世界大戦より30年も前の1890年から始まる。即ち2015年の今年は日本ーパラオの125周年記念となる。

この天佑丸に森小弁が乗船していた。彼も士族出身だ。 明治維新による武士の失業者は100万人を超えた。WWI後の軍縮で失業した軍人10万人どころではない。前者は経済開発、海外への進出を。後者は2.26に。 この違いはどこから来るのであろうか?

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年末年始に2つの映画を観た。「柘榴坂の仇討」と「動乱」 「柘榴坂の仇討」では明治維新を武士は必死で生き残った姿も描かれている。すごいエネルギーだ。2.26を扱った高倉健、吉永小百合出演の「動乱」は、東北の貧しい人々と軍部の腐敗が描かれている。 前者は観賞後元気が出たが、後者はいたたまれない気持ちになった。