やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

日本が、日本の漁業が悪者になっていく経緯

前回書いたミクロネシアでの日本漁船拿捕の件は昨日も多くのアクセスがあったし、その分野の専門家からコメントもいただいた。

ソーシャルメディアのコメントを見ても私より現状をわかっていない日本人がいるので、私も素人だがここに書いておきたい。

まずは、前回書いた罰金は間違いで「示談金」。

しかし、この示談金処理が「日本と言えば違法操業」というレッテル貼りに加担する結果となってしまった、という話だと思います。

ではなぜ白黒付けずに示談金処理なのか。

まともに入漁料を払ってまともな漁業をやっている日本の漁師さん達は(ある意味ケアレスミスで、即ち漁業資源に影響を与えない範囲の違反行為で、という事ではないかと考えています。)拿捕された一日一日が固定費用がかかり、操業日数が減って行く、という現実がある。よって1億円払ってでも早く解放して欲しい、という話になるようである。

この「示談」というのは、(音大出の私は知りませんでしたが)違法行為がなかった事になるそうだ。しかし、今回のようにメディアには、世間には「日本の違法操業でウン億円」という情報になり、それが広がり、定着してしまう。

これに味を占めた島嶼国とその背後にいる米豪法執行機関は日本漁船取締を強化する訳である。

では本当の違法操業とは何か? 本当の漁業資源枯渇につながる操業とは何か?

一つは、宮原正典氏が説明していた島嶼国が提供する便宜置籍船による操業。主に台湾漁船のようである。台湾に割り当てられた漁獲量を超えた操業が可能だし、マネロンもやっている、とこれは現地情報で聞いた事がある。

もう一つは、このブログでも取り上げた、登録も入漁料も払っていない、フィリピン、ベトナム漁船のような、ダイナマイトまで持ちんで、しかも沿岸でも行う漁業。このような船は拿捕しても一銭も取れないどころか、島嶼国政府が滞在費や帰国費まで面倒をみる事になり、大きな負担となってしまう。なので拿捕しない。

今回の日本漁船の拿捕。4隻目は裁判になるようである。白黒が付けられる。

しかし、島嶼国の法執行能力や国際関係の力関係(即ち日本を悪者にしておきたい米豪)を想像すると決して日本に有利とは言えないであろう。

しかしながら、素人考えですが、先般ヤップ離島で拿捕されたベトナム漁船にミクロネシア政府は1億円近い示談金を示したのか?数億円の保釈金を示したのか?

ベトナム漁船は日本漁船と違って、入漁料も払っていない、ダイナマイトまで持ち込む悪質な違法操業である。日本へ提示した条件より厳しくなければ、これはミクロネシア連邦政府の正義がどこにあるのか、という話にならないだろうか?