やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ゆすりたかりの島嶼国

<カツオ漁船拿捕の結末>

昨年このブログで報告した日本カツオ漁船拿捕の件を再度書く事にしたのは、ミクロネシア連邦スキリング前司法長官によって起訴された日本漁船の裁判に決着が着いたとの噂が入ってきたからだ。

この件の詳細を追っているのは当方だけであろう。なんせ同国外務大臣から1時間ツルシアゲされるという貴重な経験をしたからだ。

羽生会長にまともな現場報告がされておらず、財団として緊急課題である事をすぐさま認識し、意を決して詳細を把握する事としたのであった。

 

 

<ゆすりたかりの島嶼国>

米国外交官、ケビン•メア氏が「沖縄はゆすりの名人」と言って更迭された。

太平洋島嶼国がゆすりたかりの名人とまでは言わないが、ゆすりたかりをする人はいる。

 

財団に入った1991年。基金のガイドラインを作る事が初仕事の一つだった。ミクロネシア某国外務省の政府高官と会談した時だ。

「ガイドラインなんてどうでもいい。とっとと金を出せばいいんだよ。」

確か外務省のナンバー2か3の方だった。

さすがにショックで今でもトラウマになっている、が、そうとう基金事務局がしっかりしたガイドラインを作らなければアカン、という決意にもつながった。

島嶼国の多くの友人知人の名誉のために書いておく。こういう人は千人に一人くらいである。

 

<ミクロネシア連邦へ出張>

2014年の暮れ、相変わらずの羽生式出張命令が飛んできた。

「ミクロネシアを回ってきて欲しい。」

それだけである。誰に会って、何を協議してこいとも、どんな問題が発生しているとも、何も指示がない。当方の現地での人脈と勘と情報収集能力が期待されている。

ミクロネシア連邦で知人でもある外務大臣に会いに行ったら1時間も吊るし上げにあったのだ。

「財団は何をしているのか! 司法長官を日本に招聘するに当たって外務省になぜ一言もないのだ!」

その「司法長官」を高く評価していたのは羽生会長なのである。

 

羽生会長「優秀な米国人の司法長官が日本漁船を次から次へ拿捕して、高額の罰金を得ているだそうだよ。よっかたよ。ミクロネシア連邦に優秀なカウンターパートが出て来て。」

当方は何も知らなかったので

「良かったですねえ」と暢気に応えていたが、同時に嫌な予感はした。

 

羽生会長が高く評価していたエイプリル•スキリング司法長官、ゆすりたかりで優秀だったのである。

証拠不十分な日本のカツオ漁船が次から次へ拿捕され、示談金として何億円もせしめられていた話もブログに書いた。

こんな目にあったらたまらない。日本漁船だけでなく、他国の漁船もポナペ州に寄らなくなった。

一隻の漁船がポナペ州に落すお金は何百万。州の経済が大打撃。

それだけではない。日本との国交関係に亀裂が走った。

 

当方を吊るし上げた外務大臣は国家の一大事に対処していたのである。

それをあろう事か、日本の民間財団が現状を何も把握せず、「ゆすりたかりの司法長官」を支援していたのである。

しかし、1時間の吊るし上げの理由はわからないでもないが、やり過ぎだったと思う。

 

 

<モリ大統領の末期>

なぜ一国の司法長官のこのような暴挙が許されたのか?

異例の政権2期目の末期を迎えたモリ大統領。スキリング司法長官と組んで多くの閣僚を首を刎ねて来た。ミクロネシア海上保安を開始した際にお世話になったヤップ州のイティマイ大臣もその犠牲者である。これは新聞記事にもなっている。

モリ大統領は他にも日本企業を相手にした租税回避会社を日本のソフトバンクの支援を受けて興し収益を上げている。なんとこの租税回避会社のアドバイザーが佐藤昭治元日本大使なのである。合法なのだから問題ないのであろうが、なんとも。。

他方モリ大統領出身地チュック州は分離独立の運動が始まり、一向に社会問題が解決する様子はなかった。佐藤昭治元日本大使、APICという外務省の外郭団体でミクロネシアチャレンジの租税回避スキームである信託基金の日本の窓口業務も展開。これもモチロン合法なんだろうけど。。(注)

米国からの支援金が削られる中、「主権」というあらゆる手段で現金を獲得して行く。そんな背景がカツオ漁船拿捕の「ゆすりたかり」に重なって行く。

 

 

<ゆすりたかりの現状>

1時間の吊るし上げの内容は、すぐにポナペから日本財団の海野常務と笹川平和財団の羽生会長に報告した。

羽生氏は一切知らなかった。急遽詳細情報収集を開始した。

スキリング司法長官ともコンタクトし、何が起っているか把握に務めた。"better the devil you know"である。この司法長官が漁業、海洋、何も知らない事は20分程の会談ですぐにわかった。

司法長官「私魚の事何も知らないのよ。水産庁って国の機関なの?」

当方「知らないんですか?今度日本に行くんだったら訪ねたらどうですか?ところで外務大臣とは訪日の件情報共有されていますか?」

司法長官「(ちょっと顔色が変わり)大統領が私を全面サポートしてくれているの。私は何をしても大丈夫なの。」

 

財団の事業担当者は何も認識できていない。ゾッとした。

羽生会長から当方が財団で一番仕事ができると言われるのは、お世辞でもなんでもなかったのだ!島のことを知っているかどうかの違いではない。情報収集のイロハがわかっているかどうかだ。何も難しい話ではない。情報はあらゆる方面から収集する必要があるのだ。それだけ。

 

また、日本の世論は、水産庁を、日本漁船を悪者にしたがるのである。まさか、小国の司法長官がゆすりかたりの名人だなんて夢にも思わないのであろう。

しかし、パラオの件でもご報告している通り、小島嶼国の司法長官、特に米国や豪州出身の法律関係者は「主権」の名の下、何でもやる!

日本のカツオ漁船拿捕は証拠がないまま拿捕し、取り締まる法律がないまま起訴した、というような信じられない話なのである。本件読売新聞にも掲載されたため、ブログへのアクセスが激増した。

日本カツオ漁船、相次ぎ拿捕され解放に3億円 - やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

ミクロネシア連邦日本カツオ漁船拿捕の顛末 - やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

ミクロネシア連邦日本カツオ漁船拿捕の顛末(続き) - やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

ミクロネシア連邦日本カツオ漁船拿捕の顛末(そのまた続き) - やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

 

ミクロネシア連邦の現クリスチャン大統領(ポナペ州出身)はすぐに「ゆすりかたり」の司法長官を更迭。新しい司法長官(ミクロネシアの方です)の下、日本のカツオ漁船は無罪放免。2千万円弱の示談金で解決したのだそうだ。

なぜ2千万で手を打つのか?

ナウル協定でできたVessel Day Schemeという新しい漁業管理では、操業していなくとも日に100万円入漁料が飛んで行く。その他に人件費やその他で操業できない日が続くのは漁業会社の大打撃。ミクロネシア政府は担保金として3億円位が保留している。早期決着は漁業会社の急務である。

しかし、無罪で示談金ってやっぱりゆすりたかりの名人か。

背景にはCIとかTNC, PEWと言った海洋環境の美名の下で「お金」にたかる環境NGOがいることも充分注意して欲しい。

 

APIC、ミクロネシア自然保護基金と連携協定

http://www.apic.or.jp/events/004.html

「具体的には、ミクロネシア地域の生物多様性保護や持続可能な開発のためのプロジェクトに対して資金供与・技術支援を行い、自然保護をテーマとしたセミナーなどを開催するなどの活動のほか、「ミクロネシア・チャレンジ」(Micronesia Challenge)の資金管理を委ねられています。」

 

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http://www.mra.fm/about_boa.php