4月の統合に伴って笹川平和財団の常務理事になられた寺島常務に、バヌアツのラルフ・レゲンバヌ国土大臣を紹介させていただいたのは、彼のお父さんセシー・レゲンバヌ氏が独立運動の志士で且つ1988年に開催された笹川平和財団主催の島嶼国会議に文部大臣として参加された関係だけではない。
レゲンバヌ大臣はバヌアツ文化センター所長時代から、国の政策作りを行ってきており、今まさに国土大臣として「Deep Sea Mining」の政策対話を国民、ステークホルダーと開始したばかりなのである。
しかも、ソマレ閣下のご令嬢が副所長を務める政策研究所(PiPP)も参加している。
このPiPPが昨年10月に"Deep Sea Mining: starting a dialogue" というレポートを発行した。
今月笹川平和財団が島サミットのサイドイベントとして開催する「島と海のネット総会」にも関連するので簡単にまとめたい。
なおレポートは17頁で文字大きめなので、分量は少なく、英語が苦でなくお時間のある方は下記をご参照ください。
http://pacificpolicy.org/2015/02/deep-sea-mining-report/
バヌアツ政府、2013年末には154の海底資源開発のライセンスを発行している事を発表。
この事、政府の少数のスタッフが知るだけで、国民もレゲンバヌ大臣始め多くの政治家も一切知らなかった!
こういう事はバヌアツだけではなく他の島嶼国でも発生している。(日本でも?)
しかも、ライセンスを発行した当時の大臣には袖の下、汚職マネーが、というニュースも流れたりした。
なし崩し的に海底資源開発が進む、PNGやトンガと違い、レゲンバヌ大臣は立ち上がったのである。
レポートにある議論の内容は多方面に渡る。下記は当方の関心を中心にまとめました。
まず、アセスメントの件。評価のために入手される情報は開発会社から入手したもの。即ち中立性の問題が残る。それにバヌアツ政府に海洋資源どころか、バヌアツの国土資源を評価する人材に限りがある。
その2、開発で得た利益をどのように分配するのか?政府の収入とするとあるが、バヌアツの伝統的土地沿岸所有権の問題もあるし、政府が管理する能力があるのか?
その3、海洋資源開発に関する科学研究は未だ初期の段階であり、環境への影響は未知数である。
その4、海洋資源開発は海洋境界に関する紛争が将来予想される中、UNCLOSを実践する能力が小島嶼国にはなく、スポンサーシップを要請する国もある。
そして最後の提案には下記の6点が上げられている。
1.広く対話を促進する事。
2.情報をより多く提供できるようにすること。
3.全ての関係省庁をカバーする事。
4.他者の経験から学ぶ事。
5.より目的にあった対話、コンサルテーションを実施する事。
6.バヌアツの人々にわかりやすくするためビスラマ語で情報を共有、対話を促進する事。
レゲンバヌ国土大臣。海洋資源開発の以前に土地政策を既に改革している。
これは、日本を含む思に豪州の土地開発会社が現地の人々から土地を安く借り(75年賃貸)分譲して豪華なプール付き一件家を販売しているのだ。
目の前の現金に目がくらんだバヌアツの人々は多くの土地を手放す結果となった。
しかし、泡銭は手に残らないのがこの世の常。
無一文になった人々が、またその家族親戚が、住む場所も耕す土地もない、というような状況を生み出している。
これに対応する土地制度政策をJICAも支援し、策定したかしている最中である。