新渡戸稲造全集の第4巻を購入した。
植民政策について、矢内原先生が監修しまとめられている。
その後ろの方に「論文•時評など」として小論が20本ほど掲載されている。
その中の一本が「米国の対日態度に就いて」(改造、昭和8年5月)である。
読み始めてすぐに、これは100年前の話だが、現在にも全くそのまま通じる内容だと思った。
昭和8年、1933年10月に新渡戸はカナダで客死している。そのわずか5月前の論文である。
1932年4月新渡戸は、二度とその地を踏まないと宣言した米国に渡る。
悪化した日米関係を修復するためだ。確か昭和天皇の依頼だった、とどこかで読んだ記憶がある。
「二度とその地を踏まない」と誓ったのは1924年に公布された米国の排日移民法のせいである。
渡米した結果を二点にまとめている。
一つは、理想家が日本を非難するもの。
一つは、実際家、即ち現実を知るものが日本に賛成するものだ。
そして対日感情の悪化の原因を11項あげている。
1、米支関係は米国の独立戦争前後に開始。米国の支那への関心は日本より遥かに古い。
2、米国の外交は貿易、ドル優先である。
3、義侠心の強い米国は、日本が強いのを見て、支那に同情する。
4、支那人の反日宣伝が極めて有動的。語学の才もあり西洋人の扱いを心得ている。
5、米国の反日思想を煽っているのは支那に派遣されている宣教師である。
6、感傷的平和論を好み、戦争の原因を論じない。
7、他方、理論のみにて日本を非難する学者連中が存在する。
8、政府当局者が政治的思慮なく日本を非難する。
9、国際連盟に加入していな分だけ、国際連盟を支持する米国は日本の強硬な対応が感情的に許せない。
10、日本の対満政策は米国の中米政策に共通する所がある故それを弁護するした心で日本を非難する。
11、平和条約と九国条約を民衆心理に訴えて日本を抑制した結果群衆の感情を煽る傾向がある。
以上、その内容を正確に汲み取ってないかもしれませんので、是非原文を読んでいただく事をお勧めします。
なお、新渡戸稲造がすごいのは、米国内の反日運動ー傾向、分析に留まらず、その対応まで7つの項目を立てて論じている事である。
1、対日に対する欠乏は論理ではなく同情と政治的判断
2、論理を軽んじるという事ではなく正義観念に訴えるべし
3、日本の援助なくして満州国は成立不可能である事は内外知る事なので素直に認めよ。
4、米国の対中米政策非難は注意すべし。米国の同情を買うように説明しべし。
5、米国を批評するのは小人のする愚策。耐え忍んで言葉を慎め。
6、米国人が日本人の国民性をいかに理解するか、日本の国民性を歴史に遡り広く説明すべし。
7、米国人は満州問題からロシアを外す傾向があるので日露問題を軽視するな。
これも当方が正確にまとめきれていない可能性があるので、是非原文を読んで欲しい。