以前より読んでみたいと思っていた「米国漁業使節団報告書」(1949)。
資料は金沢八景の近くの辺鄙な場所にある、水産総合研究センター「中央水産研究所」にあった。
この報告書の中で、日本を負かした、原爆を落したばかりの米国政府は日本の水産業に喝を入れ、水産省に格上げし、しっかり水産行政をやれ、と言っているのである。
日本の漁業(遠洋)こそが米国内の反日感情を悪化させ、EEZの設置を導いた原因なのである。
これを知らずに海洋問題は語れない、ハズだ。
この報告書の存在を知ったのは国会議員の遠い親戚のおじさんが、昭和24年の国会で発言していた事がきっかけである。こんな関係がなければ、国会議事録など読まなかったであろう。(だから少々運命を感じている。)
しかも、この米国調査団は日本に水産省設置の提案をしているのだ。
第006回国会 本会議 第15号 昭和二十四年十一月二十四日(木曜日)
いったいどんな内容の報告書なのであろうか?
短い報告書であるが、数頁ごとにウーン、ウーンと唸る内容が書かれている。
しばらくこの報告書の内容を紹介するブログを書きたい。
1949年。日本漁業の運命を握った同報告書。サンフランシスコ講和条約にも影響したであろう同報告書は何を語ったのであろうか?
すべての答えは翻訳者Paul Y. Kawai氏の「諸語」にある、と思う。
下記引用する。
「三氏の日本漁業視察については、その数週間前から私はそのことを伝え聞いて居り、中でもアレン氏の来られることを聞いて實は内心心配していた。といふのは、同氏は上記のフリーマン氏と一體となって働いている人で、そのフリーマン氏は日本漁業について相等厳しい意見を持っている人である。また米国漁業界の対日感情も甚だ険悪である。(中略)事実三氏来朝の当初はかなり峻厳な態度を示して居られ、日本水産業を復興させるよりも寧ろ制限し拘束することを勧告されるのではないかと案じられたほどである。(中略)帰国の時は寧ろ日本水産業に対して好意を持たれるようになった。(中略)日本の漁師がこの限られた狭い水域で懸命に働いているのを見ると、可哀そうになると述懐して居られた位である。洵に鳥の心は鳥でなくては解らぬ。日本の業者の心は、これら三人の業者によって充分理解されたのである。」(同報告書和文訳 12−13頁)
私はこの箇所を読んで、寺島常務に、そして宮原氏に訴えた。
日本の沿岸漁業を太平洋島嶼国の人々に、PEWやNCにも見せるべきである、と。
もし、この報告書を書くために来日した3人の米国人漁業者が、戦前に日本に来て日本の沿岸漁業の現状を知っていれば、原爆は落されなかったかもしれない。
<追記>
辺鄙なところにある、と書いた中央水産研究所だが、この報告書の英文資料はないか問い合わせたところ調べていただき、下記のような丁寧な回答をいただいた。
できれば和文報告書もPDFにして公開していただきたい。
「U.S. Special Mission reviews Japanese fisheries situation.」
著者: U.S. Special Mission reviews Japanese fisheries situation.
出版: Washington, 1949.
(U.S. Department of the Interior, Fish and Wildlife Service, Fishery Leaflet, 346.)
これは、「Weekly Summary, May 22-28,1949(Report No.189)/
General Headquarters Supreme Commander for the Allied Powers, Natural Resources Sect.」.
の中の報告だったと注記があります。
なお、現在2サイトでPDF公開されていますので、お知らせ致します。
(1)NMFS Scientific Publications Office
- Legacy series Fishery Leaflets
http://spo.nwr.noaa.gov/fisheryleaflets.htm
↓
FL 346. United States special mission reviews Japanese fisheries situation.
をクリックしてください。
(2)Hathitrust Digital Library
http://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=wu.89097535702;view=1up;seq=1
*(1)のほうが見やすいです。
*Hathitrust:米国の大学図書館を中心とする学術・研究図書館の共同 デジタ ルアーカイブです