やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

英国国土3分の1は貴族様のもの!

エゲレス滞在、1週間が経つ。

もういい、この事実を知っただけで。

 

革命もなく、日本のような敗戦もなかった英国。

未だ国土の3分の一は貴族が所有しているのである!

 

"Look who owns Britain: A third of the country STILL belongs to the aristocracy"

By TAMARA COHEN FOR THE DAILY MAIL

10 November 2010

http://www.dailymail.co.uk/news/article-1328270/A-Britain-STILL-belongs-

 

 

問題はありとあらゆる方法で、英国貴族の皆様は租税回避方法を開発している事である。

例えば、The Cityを起源としたタックスヘブン。

例えば、税金対策のナショナル•トラスト。

 

そう、この2つ、即ちタックスヘブンとナショナル•トラスト、太平洋島嶼国と深い関係があるのだ。

 

<植民活動とタックスヘブン>

小島嶼国が誕生したのが60年代後半から70年代。

この時期、英国はThe Cityを中心としたタックスヘブンを世界に設置するため、(Self-determinationのためではなく!)旧植民地であった、世界の島々を独立させた。当時はThe Cityを中心とした金融関係者だけでなく英国政府の開発省も、この案に賛成した。産業がない小島嶼国で唯一財政収入が見込める方法であった。

しかし、小島嶼国の緩い金融規制の下で開発されたタックスヘブンは、世界の犯罪組織、個人のお金も呼び込み、小島嶼国の政治不安を招く結果となっている。

 

<ナショナル•トラストと海洋保護区>

広大な海洋保護区を設置すると同時に信託基金を設置したのは、キリバスのフェニックス海洋保護区である。案を出したのは英国の海洋学者Gregory Stone。講演ではっきりと信託基金が世界のお金持ちから注目されている事を述べている。

 

yashinominews.hatenablog.com

 

海洋学者Gregory Stoneがアイデアを得たのがこのナショナル•トラスト。放っておけば一銭にもならないどころか、税金がかかる広大な土地を国家的財産(所有権は貴族様に残る)にする事で、政府から補助金は得られるし、租税回避のための信託基金はできるし、環境学習の名の下で収益活動もできる。

 

ちなみに、この二番煎じであろうパラオの海洋保護区の信託基金は思った通りに基金が集まっていないのだそうだ。

 

<英国に革命を!日本の共産党を派遣しよう!>

当方が長年気になっていた、英国の金融システムと太平洋島嶼国の問題が一気に見えてきた。

これも、滞在先のオックスフォード大学教授のおかげである。

私「英国の正義はどうなったんですか?国民は疑問を抱かないのですか?」

教授「そうなんだよ。貴族はうまく情報を管理している。英国の庶民は殆ど関心を示さない。時々新聞に記事が出るけどね。」

教授「ところで日本の貴族の土地はどうなっているの?」

私「詳しい事は知りませんが、ペリーが来て幕藩体制が崩れ、GHQが来て地主が土地を取り上げられたんだと思います。」

教授「英国は革命がなかったからね。」

私「日本には世界最強の共産党もあります。」

教授「日本の共産党を英国に派遣しない限り、英国の土地改革は不可能でしょう。」

 

勿論、半分冗談の会話である。

これが英国だけの話であれば気にしない。が、英国のほんの少数の貴族様の金融、租税回避活動が、島嶼国に、多分、香港、米国に飛び火しているのだ。それはどう考えても健全な社会を、海洋管理を導くものとは思えない。

大英帝国の植民支配、未だに続く。アダムスミスが嘆くぞ。