やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

BBNJとは何か?

2008年から担当しているミクロネシア海上保安事業を通して海洋問題を扱うようになり、9年が経つ。

海洋問題を体系的に学びたいと思って国際海洋法の権威の門を思い切って叩いたところ、現在活発に議論されているBBNJを追ってみたらどうか?とのアドバイスをいただいた。

BBNJ?

海洋の問題は限りなく、深く広いのである。知らないことばかりだ。

米国のOur Ocean、ワシントン条約と寄り道してしまったがいよいよBBNJについてまとめて行きたい。

まずはBBNJと何か?

JAMSTECの本田悠介氏(2016年3月31日)が簡潔にまとめたペーパーを見つけた。

国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)と国連海洋法条約

国際法学会エキスパートコメント No. 2016-1

http://www.jsil.jp/expert/20160331.pdf

BBNJとは marine biological diversity of areas beyond national jurisdiction

国家管轄権外区域の公海や深海底にいる「極限環境生物」の希少性、脆弱性の管理をどうするか?という事のようだ。

本田氏は問題の所在として2つ上げている。

一つは先進国が利益を独占する事への途上国からの批判。

一つはBBNJが既存のUNCLOS, CBD等の法的枠組の適用外である事。

「公海自由の原則」による「早い者勝」の現状への途上からの不満と環境保護への懸念だ。

次に交渉の経緯がまとめられている。

BBNJが本格的議論され始めたのが2004年でUNCLOSの中にBBNJの作業部会もできた。しかし議論は進まず、急速な展開を見せたのが2011年。翌年のリオ20でこの動きが加速されUNCLOSの下に新しいBBNJ条約を策定する方向が決まる。そしてそこまでのプロセス、協議内容が2015年6月の国連総会で決議された。

今まさにその作業が行われている最中なのである。

次に本田氏はBBNJ条約に盛り込まれる事が検討されている(1) 海洋遺伝資源、(2) 区域型管理ツール、(3) 環境影響評価、(4) 能力開発及び海洋技術移転、の法的論点がどのように議論されているか、まとめている。 これは次回。